【習慣化チャレンジ】【65/30日目】親指シフト

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習慣化チャレンジ 65/30日目

身体習慣30日にチャレンジ中です。

親指シフトのキーボードタイピング!

ブログには著作権が切れたシャーロックホームズを15分という時間の中でどこまでできたかを毎日アップしていきます。

よかったら毎日続きを見る感覚で生暖かく応援して頂けると嬉しいです。

 

晒し練習1 練習ソフト(毎回練習ソフトを最初から始め、15分でどこまでできるか?スピードよりも正確性に重点をおき、毎日初歩からスタートさせる)

1日目 練習問題16
2日目 練習問題21
3日目 練習問題23
4日目 練習問題24
5日目 練習問題24
6日目 練習問題24
7日目 練習問題25
8日目 練習問題25
9日目 練習問題27
10日目 練習問題27
11日目 練習問題28
12日目 練習問題29
13日目 練習問題30
14日目 練習問題33
15日目 練習問題33
16日目 練習問題37
17日目 練習問題36
18日目 練習問題37
19日目 練習問題38

(練習問題38 START)

20日目 練習問題56
21日目 練習問題57
22日目 練習問題57
23日目 練習問題55

 

晒し練習2(シャーロックホームズ『緋色の研究』 1日ごとに色を変えています)

第一部

元軍医局ち

ジョンHワトソン医学博士

回顧録からの復帰

第一章

シャーロックホームズという人物

 

1878年、私はロンドン大学で医学博士号を取得し、続いてネットレイ軍病院で軍医となるための所定研修を受講した。この研修が終わると、すぐに軍医補として第五ノーサンバーランド・フィージリア連隊に配属された。すでに第二アフガン戦争が勃発していたため、連隊はインドに駐留していた。ボンベイに上陸してみると、連隊はいくつもの峠を越えて進軍しており、すでに敵地深くにいることがわかった。やむをえず、私は同じ状況下にある大勢の将校とともにその後を追った。そして、なんとかカンダハールまで無事に到着することができた。そこで私は自分の連隊見つけ、ただちに新しい任務につくこととなった。

この戦争は多くの人間に勲章と昇進をもたらしたが、もたらしたが、私にとっては不幸と災難以外の何者でもなかった。私は自分の旅団からバークシャー連隊に転属させられ、マイワンドの宿命的な戦闘に参加することとなる。この戦闘中、私はジェゼイル銃で肩を撃たれ、弾丸は肩の骨を砕き鎖骨下動脈をかすめた。もし、献身的で勇気ある看護兵マリがいなかったら、私は残忍なガジスの手に落ちていたに違いない。彼は私を素早く荷馬の背に乗せると、イギリスの防衛戦まで無事に運ぶことに成功した。

はげしい傷の痛みに加え、長い間の苦役によって体が衰弱していたので、私は戦線を離脱させられて、おびただしい負傷兵の列に加わり、ペシャワルの兵病病院へ送られた。私はここで体力を回復し、病棟の周りを歩いたり、ベランダでちょっと日光浴が出来るまでに良くなっていた。その時、私は腸チフスに襲われた。イギリスのインド占有の呪いとも言うべき病気だった。何ヶ月間も私の命は絶望視されていた。だが、最終的に意識が戻り回復期に入った時、医事委員会は、私がやせ衰え、たいりょくも非常に弱っていたため、即日イギリスに帰還させる事を決定した。その結果、私は軍隊輸送船おろんてす号へ急送され、ポーツマス桟橋に上陸した。私の体は取り返しがつかないほど損なわれていた。しかし寛大な政府によって、健康を回復するために9ヶ月の休暇が認められた。

私はイングランドには知りあいも親類もいなかった。それゆえ私は空気のように自由だった。・・・いや、1日11シリング6ペンスの収入が許す限り自由だった。こうした状況下で、私は自然にロンドン・・・そこは帝国の怠け者達が否応無しに排出されていく巨大な汚水槽だ・・・、へと引きよせられた。そこで私はしばらくの間、ストランド街のプライベートホテルにに滞在し、許される限度をはるかに超えるを遙かに越えた浪費をしながら、これといった楽しみもない、無意味な生活を送っていた。すぐに、財政状況が非常に逼迫してきたので、私はこの大都市を離れてどこか地方にいくか、生活スタイルを完全に変えなければならないことに気付いた。私は後者の選択肢を選び、ホテルを出て、見栄をはらずもっと費用のかからない居住地を定めようという決心を固め始めた。

この結論に達したまさにその日、私はクライテリオン・バーに立ち寄った。その時私の肩を叩く人間がいた。振り返って見ると、それはバーツの病院で私の助手をしていたスタンフォードと私は病院時代、特に親しくはなかったはなかったが、この時は本当に彼を心から歓迎した。そして彼の方も、私に会えて喜んでいるようだった。私は嬉しくてたまらなかったので、ホルボーンで一緒に昼食をとるように頼み、馬車に同乗して出かけた

「ワトソン、一体どうしてたんだ?」馬車が混雑したロンドンの通りをガタガタと通り過ぎている時、彼は驚きを隠さずにこうたずねた。「棒のようにガリガリだし、ドングリみたいに真っ黒じゃないか」

私は彼に自分の大きな大変な経験を簡単に説明したが、馬車が目的地に着いても、まだ話が終わっていなかった。

「大変な目にあったな!」彼は私の不幸な話を聞き終わると気の毒そうに言った。「今はどうしているんだ?」

「住む場所を探している」私は答えた。「そこそこの値段で住み心地の良い部屋を見つけるという難問に取り組んでいる最中さ」

「妙な話だな」同伴者は言った。「今日その表現を使った男は、君で二人目だ」

「一人目は誰なんだ?」私は尋ねた。

「病院の化学実験室で働いている男だ。彼は今朝、いい部屋を見つけたが自分の収入では高すぎるし、家賃を折半する相手が見つからないと嘆いていた」

「本当か!」私は叫んだ。「本当にその男が部屋と家賃を折半したいとのぞんでいるなら、僕はうってつけだ。僕は一人よりも同居人がいたほうがいい」

スタンフォードはワイングラス越しにちょっと奇妙な視線を投げかけた。「君はシャーロックホームズを知らないだろう」彼は言った。「多分ずっと一緒にいたいとは思わないはずだ」

「なぜだ。何か不都合な点があるのか?」

「いや、不都合があるとは言っていない。彼はちょっと考え方に奇妙な点がある、科学のある分野において非常に熱心だ。僕が知る限り彼は十分まともな男だ」

「どうやら、医学生らしいな?」私は言った。

「いや・・・・僕は彼が何を好んでやろうとしているのか全くわからない。彼は解剖学に詳しく、第一級の科学者だと思うしかし僕の知る限り、体系だった医学の授業は全然受けていない。彼の勉強は極めて気まぐれで突飛だ。しかし奇妙な知識をいっぱい蓄えていて、彼の教授でもあれには仰天するかも知れない」

「将来何をするつもりか、聞いたことはないのか?」私は尋ねた。

「いや、簡単に聞き出せるような男じゃない。とはいえ、奇妙な思いつきに捕らわれると話し好きになるがね」

「ぜひ会ってみたいな」私は言った。「もしと一緒に住むとしたら、勉強好きで静かな生活習慣の男がいい。私はうるさい音や馬鹿騒ぎに耐えられるほど回復していない。どちらもアフガニスタンで嫌と言うほど味わってきた。もう死ぬまで十分だ。どうやったらその友人に会えるかな?」

「間違いなく研究室だ」同伴者が答えた。「彼は何週間も全く姿を現さないか、さもなければ朝から晩までそこで働いている。よかったら、昼食の後で行ってみよう」

「分かった」私は答えた。そして会話は別の方向に流れて行った。

ホルボーンを後にして病院に行く際、スタンフォードは私が相部屋を申し込む男についてさらに何点か話をした。

「彼とうまくいかなくても僕を責めないでくれよ」彼は言った。「僕は時々研究室で彼と会っているだけで、それ以上のことは何もしらない。このお膳立てを頼んだのは君の方だから、責任を押しつけられても困るよ」

「もし上手くいかなかったら、別れるのは何も難しくない」私は答えた。「どうやら、スタンフォード」私は彼をじっと見つめて言った。「この件から手を引きたい理由があるようだな。その男の気性が荒いのか、それとも他に何かあるのか?遠回しな言い方は辞めてくれないか」

「言い表し難いことは簡単には言えないよ」彼は笑って答えた。「ホームズは僕の目から見ると目から見るとちょっと科学的すぎる、・・・冷血に近いくらいだ。僕は彼が最新の植物性アルカロイドを友人に少量与える場面を想像することができる。もちろん、悪意からではなく、単にその効き目を正確に知りたいという探求心からだ。公正を期すなら、彼は自分自身に対して喜んで同じようるするだろう。彼は同じようにするだろう、彼は確実で正確な知識に対する情熱があるようだ」

「結構なことじゃないか」

「そうだ。しかしそれがちょっと極端かも知れない。解剖室で死体を打つとなると、間違いなくかなり異様なところまでいっている」

「死体を打つ!」

「そうだ。死後、どの程度アザが出来るかを確かめるためだ。僕は彼がそうしているのをこの目で見た」

「それなのに医学生じゃないと言うのか?」

「その通りだ。彼の研究目的が何なのか誰も知らない。しかしついたよ。自分の目で確かめるのが一番だ」彼がそう話している間に、私たちは細い道を下り、大きな病院の一棟に通じる小さな横扉をくぐった。それは私には勝手知ったる場所だったので、殺風景な石階段を上がり、漆喰の壁とこげ茶色の扉が並ぶ長い廊下が枝分かれしていて、化学実験室に通じていた。

そこは天井の高い部屋で、数え切れないほどの瓶が所狭しと並んで、散らかっていた。大きな低いテーブルがあちこちにあり、その上にレトルトや試験管や青く炎を上げるブンゼン灯が林立していた。部屋にいた研究者は一人だけだった。その男は遠くのテーブルに覆い被さって仕事に没頭していた。我々の足音で、彼はあたりを見回し、嬉しそうに叫んで、さっと立ち上がった。「見つけたぞ!見つけたぞ!」彼は試験管を手に駆け寄ってきて私の同伴者に叫んだ。「ヘモグロビンのみに特異的に反応して沈殿する試薬を見つけたぞ」もし彼が金脈を見つけていたとしても、これ以上に嬉しそうに顔はできなかったかもしれない。

「ワトソン博士だ。シャーロックホームズ氏だ」スタンフォードは私たちを紹介しながら言った。

「はじめまして」彼は常識を越えた握力で私の手を握りしめながら、心をこめてこう言った。「あなたはアフガニスタンに行ったことがありますね」

「いったいどうやってわかったんですか?」私は驚いて尋ねた。

「お気になさらずに」彼は一人含み笑いをして言った。「今重要なのは、ヘモグロビンに関してです。僕の発見の重要性はもちろんおわかりいただけますよね?」

「化学的には、間違いなく面白いですね」私は答えた。「しかし、実用的には・・・」

「どうしてですか。法医学的に見て、ここ数年で最も実用的な発見です。これが確実な血痕の判定法になることがわかりませんか?ちょっとこちらに来て下さい」彼は私のコートの袖を勢いよく掴むと、作業していたテーブルまで引っ張ってきた。「ちょっと新しい血を採りましょう」彼は指に千枚通しを突き刺しながら言った。そして化学実験用のピペットで出て来た血を吸い取った。「さあ、この少量の血を1リットルの水に入れます。この混合液は純粋な水にしか見えないでしょう。血の比率は百万分の一以上ということはない。それでも間違いなく、特性反応が見られるはずです」こう言いながら、彼は白い結晶をいくつか容器に投げ入れ、透明な液体を数滴落とした。その瞬間、数滴落とした。その瞬間、容器は鈍いマホガニーの色を帯び、ガラス容器の底に褐色の沈殿物がたまった。

「ハ!ハ!」彼は新しい玩具を手にした子供のように喜んで、手を打ち合わせながら叫んだ。「どうお考えですか?」

「繊細な実験のようですね」私は言った。

「すばらしい!すばらしい!旧式のユソウボク試験は面倒で不確かだった。血球を顕微鏡検査するのも同じです。後者は血痕が数時間たつと使えない。ところが、これは血が古くても、新しくても反応は変わらないようだ。もしこの検出表が生み出されていれば、今、大手を振って歩いている何百人という男達は、ずっと以前に犯罪者として処罰されていたはずだ」

「なるほど!」私はつぶやいた。

「すべてのこの一点にかかっている犯罪が絶えることはない。犯行後、下手をすると何ヶ月もたってから、一人の男に容疑がかかる。下着や服が調べられ、そこに茶色の染みが見つかる。これは血痕か、それとも泥汚れか、錆汚れか、果物の染みか、それともまた別の物か?信頼性の高い検査方法が無かったからだ。今、ここにシャーロックホームズ法がある。そしてこれからは何の困難もない。」

彼は話しながら目をキラキラと輝かせた。そして彼は手を胸に当て、想像上で拍手喝采を浴びたかのように一礼した。

「それはおめでとうございます」私は彼の熱心さに圧倒されてこう言った。

「去年フランクフォートでフォン・ビスチョフ事件があった。この試験が存在していれば、彼は間違いなく絞首刑になっていただろう。それからブラッドフォードのマンソン、そして悪名高いミューラー、それにモンペリエのルフェーブル、ニューオリンズのサムソン。この検査方法が決め手になったはずの事件をいくらでも挙げることが出来る」

「君は犯罪の生き字引だな」スタンフォードは笑って言った。「このジャンルの新聞を創刊できるかもしれんな。『警察新聞』とでも名付けたらどうだ」

「それが出来たら面白い読み物になるだろうな」シャーロックホームズは指の刺し傷に小さなバンソウコウを貼りながら言った。「注意をしなければ」彼は笑顔で私の方を振り返りながら続けた。「彼は多量の毒物を扱うのでね」彼は話しながら手を差し出したので、そこら中に似たようなバンソウコウが貼り付けられ、強い酸で変色している部分があるのが、目に入った。

「話があってここまで来た」スタンフォードは背の高い三本足の丸椅子に腰をかけ、もう一つの椅子を足で渡しの方に押し出しながら言った。「こちらの友人は住むところを探している。そして君は費用を折半する相手が見つからないとこぼしていた。僕は二人を引き合わせるのがいいと思ったんだ」

ホームズは私と相部屋になるのに乗り気になったように見えた。「ベーカー街に目をつけている部屋がある」彼は言った。「二人ならぴったりだ。強いタバコのニオイは気にならないか?」

「自分もずっと海軍煙草を吸っている」私は答えた。

「それはよかった。僕は普通あちこちに化学薬品を置いていて、時々実験をする。それでは困るだろうか?」

「全然問題ない」

「そうだな・・・僕の欠点は他にどんなものがあったかな?僕は時々ふさぎ込み、何日も口をきかないことがある。そうなった時でも機嫌が悪いと思わないでほしい。ただ放っておいてもらえれば、すぐによくなる。君の方は、ここで白状しておくことが何かあるかな?一緒に住み始める前に一番悪いことを打ち明けあうのは、お互いにとっていいことだ」

私はこの反対尋問に笑い出した。「ブルドッグの子犬を飼っている」私は言った。「神経が弱っているので騒音は嫌いだ。とんでもない時間に起きる。そして非常に怠け者だ。体調がよければ他にも悪臭があるが、今のところこれが主なものだね」

「バイオリンの演奏は騒音のなかに入るかな?彼は心配そうに尋ねた。」

「演奏家次第だね」私は答えた。「上手い演奏のバイオリンを聞くのは無上の喜びだ。下手な演奏は・・・・・」 

「ああ、それは問題ない」彼は楽しそうに笑って叫んだ。「これで決まりだと思っていいな、もし部屋が君の気に入ればだが」 

「いつ見に行く?」 「ここに明日の正午に来てもらえないか。一緒に行って手続きをすべて済ませよう」彼は答えた。 

「結構だ、正午ちょうどに」私は彼の手を握りながら言った。化学薬品の中で仕事をしているホームズを後にして、スタンフォードと私は、私のホテルに向かって一緒に歩いて行った。

「ところで」私は突然立ち止まり、スタンフォードの方を向いて尋ねた。「彼は私がアフガニスタンから帰ってきたことをどうやって知ったんだろう?」

スタンフォードは謎めいた笑いをした。「それが彼の面白いところさ」彼は言った。「一体どうやってみやぷるのか、みんな知りたがっているのか?みんな知りたがっているよ」

「ほお、謎なんだな?」私は手をこすりながら叫んだ。「これは非常に興味をそそるな、会わせてくれて本当にありがとう。『人間が真に研究すべきは人間』そうだろ」

「じゃ、君は彼を注意深く観察しなければ」スタンフォードは私に別れの挨拶をしながら言った。

「しかし、彼はなかなか手強いと気付くはずだ。かけてもいいが、君がホームズについて知るより先に、もっとホームズが君のことを知っているだろうな。さようなら」

「さようなら」私は答えた。そして知り合いになった人物に非常に興味を惹かれながら、自分のホテルまでぶらぶらと歩いて行った。

次の日、私たちは約束通りに待ち合わせをし、最初に会った時、ホームズが言っていたベーカー街221Bの部屋を下見した。居心地の良い寝室が二部屋あり、居間は一部屋だが、なかなか立派な内装で、大きな窓が二つあり、明るく風通しの良い広い部屋だった。この寝室はどこから見ても文句のつけようがなく、家賃も二人で払う分には手頃だったので、その場で交渉が成立した。そして二人とも、すぐに引っ越すことになった。その日の夕方、私はホテルから荷物を移動し、次の日の朝、ホームズが私に続いて箱や旅行鞄を何個か運び入れた。一日二日、私達は忙しく荷物を解き、持ち物を一番使いやすい場所に配置したりした。それが済むと、ジョジョに落ち着いて、新しい環境に慣れることが出来るようになってきた。

ホームズは確かに共同生活を送るのが難しい人間ではなかった。日常の態度は物静かで、規則正しい生活習慣だった。夜十時以降に起きている事はほとんどなく、私が朝起きる前に朝食を終えて出かけていた。一日中科学実験室にいる時もあれば、解剖室にこもるときもあり、時には長い散歩に出かけた。行き先はどうやらこの街の最下層地区のようだった。仕事の発作がやってきたときは、彼の活力に勝るものは何もなかった。しかし時々その反動がやってきた。そうなると、彼は何日もずっと居間のソファの上に寝そべり、朝から晩まで身動きもせず、じっと黙り込んでいた。こうした折、彼の目は夢でも見ているようにうつろになっていた。彼が全体として節度と清潔さを保った生活をしていなかったら、私は薬物中毒を疑ったかもしれない。

数週間が過ぎ、彼自身や彼の人生目標に対する好奇心が、ジョジョに膨らんできた。彼の体つきと風貌は、どれほど注意力のない人間でも印象に残るものだった。身長は6フィートをちょっと越えているが、極端に痩せているのでずっと高く見えた。さっき書いた無気力な期間を除けば、彼の目は鋭く射貫くようだった。そして細い鷹のような鼻があるために、表情全体には機敏さと決断力の雰囲気がただよっている。顎は突き出て角張っていたが、これも決断力がある男の印だった。手はいつもインクの染みや化学薬品で汚れていたが、指先は非常に繊細だった。彼が壊れやすい化学兵器を扱う場面をじっと眺めていて、私はしばしばそれを目にする機会があった。

私がこの男にどれほど好奇心を刺激されたか、そして、自分に関することを何一つ語ろうとしない彼の口を、どれほどしつこくこじ開けようとしたか、それを告白すれば、読者は私をどうしようもないお節介焼きと見なすかもしれない。しかし評決を言い渡す前に、私の生活がいかに無目的だったか、そして私の注意をひきつけるものがどれほど少なかったかを思い出してほしい。私の健康状態では、天候が特に穏やかな場合を除いて、無理に外出することは出来なかった。その上私には、尋ねてくる友人もいなかったので、日常生活は単調そのままだった。こんな状況だったので、私は同居人を取り巻く小さな謎を心の底から歓迎し、それを解こうとして、非常に長い時間を費やした。

彼は医学の研究はしていなかった。直接尋ねてみたところ、あっさりと自分からスタンフォードの言った通りだと認めた。彼は学会に加入するための研究もしていないようだった。しかし彼がある種の研究かける熱意は並外れたものがあった。独特の分野においては、途方もなく膨大で正確な知識を持っていて、その観察眼を持っていて、その観察眼は本当に驚くべきものだった。言うまでもなく、そこまで一生懸命に研究したり、正確な情報を身につけたり、何か明確な目標を持っているはずだ。漫然と本を読んでいるだけの人間が、目を見張るほど精緻な学習成果を上げるなど、まずありえない。どんな人間でも、細部にまで気を配るというのは、そうするだけの特別な理由があるはずだ。

彼はその知識と同様、無知においても極端だった。現代文学、哲学、政治、に関して、彼はほとんど何一つ知らないようだった。トーマス・カーライルに関して言及すると、彼は非常に素朴でそれは誰で何をした男かと聞いてきた。しかし私が何より驚いたのは、偶然、彼がコペルニクスの地動説を知らず、太陽系の構成も知らないことがわかった時だ。この十九世紀の文明人の中に、地球が太陽の周りを回っていることを知らない人間がいるなどというのは、あまりにも途方もない話で、とても信じられなかった。

「驚いているようだが」彼は私の唖然とした顔に笑いかけて言った。「今、僕はそれを知ったが、全力で忘れようとするつもりだ。」

「忘れる!!」

「いいか」彼は説明した。「人間の頭脳は元々小さな屋根裏部屋のようなものだと見なしている。そこに人は自分が選んだ家具を備え付けなければならない。手当たり次第に、あらゆる種類のがらくたを片っ端から詰め込む人間は、馬鹿者だ。結果として自分にとって役立つ可能性のある知識が押し出される。最善でも、他の色々な事実とごちゃまぜになり、結局知識を取り出すのが難しくなる。腕のいい職人は、脳の屋根裏部屋に何を持ち込むのかについて伸張だ。彼は仕事に役立つ可能性が道具のみを持ち込むが、その品揃えは非常に豊富で、全体をほとんど完璧な順序に並べている。この小さな部屋が弾力性のある壁で出来ていて、いくらかでも拡張できると考えるのは間違っている。知識を詰め込むたびに、知っていた何かを忘れる時が必ずやってくる。結局、使い道の無い事実によって有用な事実が押し出されないようにするのが何よりも重要になるのだ。

「しかし、太陽系だぞ!」私は抗議した。

「それが僕にとって何になる?」彼はいらだって話しを遮った。「君は地球が太陽の周りを回ると言った。もし地球が月の周りを回っても、それは僕にも僕の仕事にも何の違いもないだろう」

私は彼の仕事が何なのかを尋ねようとしたが、彼の態度には、どことなく、それを訊かれたくないという様子があった。とはいえ、私はこの短い会話を何度も思い返した。そしてそこから推理してみようと努力した。彼は自分の目的に関係ない知識を獲得するつもりはないと語った。ということは、彼が保有している知識は全部彼にとって有用なものだろう。彼が特に広い知識を持っているのが明らかになった様々な分野を、私は心で数えてみた。私は鉛筆を手にしてそれらを書いてみたりさえした。その一覧を完成させた時、私はそれを読んで失笑を禁じ得なかった。リストはこのようなものだった。

シャーロックホームズ 彼の限界

1.文学の知識 皆無。

2.哲学の知識 皆無。

3.天文学の知識 皆無。

4.政治学の知識 皆無。

5.植物学の知識 様々。ベラドンナ、阿片、毒草全般には詳しい。実用的園芸に関しては知識がない

6.地理の知識 実用的だが限界がある。土壌を一目見ただけで違いを言い当てられる。散歩の後、ズボンの跳ねを私に見せて、その色と堅さでロンドンのどの場所でそれがついたか私に語った。

7.化学の知識 深い。

8.解剖学の知識 正確だが体系的でない。

9.異常な事件記録の知識 膨大。彼は今世紀に起きた惨事の全てを知っているようだ。

10.バイオリンを上手に弾く。

11.熟練の木刀選手、ボクサー、剣士。

12.イギリス法に関する極めて実用的な知識を保有。

私はリストをここまで書いた時、あきらめてそれを暖炉に投げ入れた。「これらの技能を一つ残らずまとめ上げ、全部が必要な職業を発見することで、この男がいったい何をしようとしているのか、分かりさえすればなあ」私は自分に語りかけた。「いい加減に、こんな試みは辞めるべきだな」

私は彼のバイオリンの腕前について上のリストで言及した。それは非常にすばらしかったが、他の技能と同じように奇妙だった。彼は楽曲を、それも難しい楽曲を、巧みに弾くことができた。私がリクエストすると、メンデルスゾーンのリートやその以外にも私の曲を弾いてくれたので、それがよくわかった。しかし勝手に演奏させておくと、曲を奏でたり、聞き覚えのある旋律を弾いたりすることはほとんどなかった。夕方になると彼は椅子にもたれかかり、目を閉じてぞんざいに膝の上にポンとおいたバイオリンを弾いた。和音は時に朗々と、時に陰鬱になった。幻想的で快活になることもたまにあった。明らかにそれは彼の思考内容を反映していた。しかし、音楽が思考を助けているのか、それとも演奏はただ気まぐれや思いつきの結果なのか、これは判断のしようがなかった。私はこの腹立たしい独演会に文句を言っていたかもしれない。しかし、彼は私の我慢に対するささやかな埋め合わせとして、いつも最後に私が好きな歌曲を全部、順に演奏してくれたのだった。

最初の一週間ほど、一人の訪問客も来なかったので、この同居人は私と同じように友人がいないのだと思い始めていた。しかしまもなく、彼には非常に様々な階級の顔見知りが大勢いることがわかった。その一人に背の低い、土気色でネズミのような顔の黒い目をした人物がいた。ホームズは、彼をレストレード氏だと紹介した。彼は一週間に三、四回やってきた。ある朝、流行の服を着た若い女性が尋ねてきて、30分以上待っていた。その日の午後には、ユダヤ人行商人風の、白髪交じりのみすぼらしい訪問者がやってきた。見たところ、非常に興奮しているようだった。そしてそのすぐ後にはだらしない感じの年配女性がやってきた。別の日には、白髪の老人がホームズと会談をしていた。また別の日にはベルベットの制服を着た駅のポーターが訪れた。こういう得体の知れない人物達が現れると、ホームズは居間を使わせてほしいと頼み、私は寝室に引き下がった。彼はそのたびに、迷惑をかけてすまないと言った。

「この部屋を仕事の場として使う必要がある」彼は言った。「あの人達は僕の客なのだ」ここはまた、単刀直入に質問できるチャンスだった。しかし私はそれほど厚かましい性格ではなかったので、他人から無理矢理話を聞き出すのを躊躇した。私はその頃、彼がそれを訊かれるのを、激しく嫌っていると想像していた。しかし、彼が自分からその話題を切り出したので、私の想像は間違っていたことがわかった。

三月四日のことだった。これは、記憶にとどめるのにふさわしい日だ。私は普段よりちょっと朝早く起きたので、シャーロックホームズはまだ朝食を食べ終えていなかった。女家主は、私が朝寝坊だということをよく知っていたので、私の席には食器が並べられておらず、コーヒーの準備もできていなかった。無性にイライラして、私はベルを鳴らし、ジブンが食卓に来たと無愛想に通知した。それから私はテーブルから雑誌を取り上げ、同居人が静かにトーストを食べている間、しばらく閑をつぶそうとした。記事の表題の一つに鉛筆で印がつけてあったので、私は自然にその記事に目を走らせた。

そのなんとも大胆な表題は「生命の書」だった。これは観察力のある人間が、正確で体系的な調査によって周りで起きていることをどの程度見抜くことができるかを示そうとしていた。これは私の目から見ると、合理と不合理を驚くべき方法でごった煮にしたように思えた。その理論は細かく鋭い。しかし私にはその推論がこじつけで大げさに見えた。著者は瞬間の表情、筋肉のちょっとした収縮、わずかな目の動きで、心の一番奥底を見抜けると主張していた。著者によれば、訓練された観察者と分析者に対してごまかしは、一切できなかった。著者の推論は、膨大な数のユークリッドの定理と同様、絶対で確実なものだった。著者が出す結論は素人には非常に衝撃的に見えるので、どのようにどのようにその結論に帰着したかという手順を知らされるまで、著者が魔術師だと思われることも当然、とのことだ。

「一滴の水から」著者は言う。「論理家は大西洋やナイアガラ瀑布が存在しうる事を、実際に見ることもも聞くこともなく推察できる。同じように全ての生命は大きな連鎖になっており、その一つの連鎖を提示されれば、全体の性質はいつでも分かる。他の全ての芸術と同様、この推論と分析と科学は、長く忍耐強い訓練を通してのみ獲得できる。これを最高の次元にまで極めるには、一生かけても十分とは言えない。精神的で知性的な様相に関しては最高度に難しい技術が要求されるので、この方面に応用する前に人間調査員はもっと初歩的な問題を解決することから始めるべきである。まず、ある人物に会った時、一目見てその人物の経歴と職業を見極めることを学習させるべきである。そういう訓練は他愛もないものに見えるかもしれないが、それによって観察の技能が鋭敏になり、見るべき点と探すべき箇所が学べる。人間の爪によって、コートの袖によって、靴によって、ズボンの膝によって、人差し指と親指のタコによって、表情によって、シャツの袖口によって、人間の職業は明瞭に暴かれている。これらを統合すれば、いかなる場合であっても有能な調査員が解読に失敗するなどとは、ほとんど考えられないことである」

「こんなたわごとには開いた口がふさがらん!」私は朝食の席につく時、エッグスプーンで指し示して言った。「君が印をつけているから、読んだはずだ。巧妙にかかれていることは否定しない。しかし、イライラするな。これは明らかに安楽椅子の怠け者の理論だ。彼はこの素晴らしくも興味深い逆説を全て、隔絶された一人きりの書斎の中で発展させた。これに実用的な価値はない。僕は著者を地下鉄の三等車両に放り込んでみてい気がする。そして車両の人間全員の職業を尋ねてみたい。僕は答えられない方に千ポンド賭けたいな」

「お金を失うことになるだろうな」ホームズは静かに言った。「その記事のことだが、書いたのは僕だ」

「君が!」

「そうだ。僕は観察と推理の両方の天分に恵まれている。おそらく世界でただ一人だと思う。僕は専門的な助言をする探偵だ。君にこれが理解できるかどうか。ここロンドンには、たくさんの公的な調査官や私立探偵がいるこれらの人物が途方にくれると、僕のところに来る。そして僕はほとんどの場合、犯罪史の力を借りて、それらをきちんと並べ直すことができる。犯罪には強い系統的類似性がある。もし千の詳細をすべて知っていて、千1個目が解決できないとすれば、おかしな話だ。レストレードは有名な刑事だ。彼は最近の偽造事件が手も足も出ない状態だから僕のところに来るんだ。」

「他の人間は?」

「ほとんど興信所から送られてきた連中だ。みんな、何かの問題を抱えていて、すこし教えを請いたい人物だ。僕は彼らのはなしを聞き、彼らは僕の意見を聞く。それで僕のふところが潤う」

「しかし君は本気で言っているのか」私は言った。「自分の部屋を離れることなく、君は他の人間が手に負えなかった謎を解決できるのか。相手は自分の目で詳細をくまなく見てきているんだぞ?」

「もちろん解ける。僕はその方面ではひらめきのようなものがあるのさ。時折、もうすこし複雑な事件が持ち込まれることもある。その時は、僕も駆け回って自分の目で状況を確認しなければならない。君は僕が多量に特殊の知識を持っているのを知っているだろう。僕はそれを事件に適用しているが、そのおかげで素晴らしくことが容易になっている。その記憶の中に示した推理の手続きを君はあざ笑ったが、僕の実務には計り知れない価値がある。観察は僕にとっては第二の天性だ。君と初めて会った時、僕は君がアフガニスタンから戻ってきたと言ったら、君は驚いたようだった」

「きっとそう聞いてたんだろう」

「とんでもない。僕は自分が君がアフガニスタンから来たとわかった。長い間の習慣になっているから、僕の心に浮かぶ思考の連鎖は非常に素早い。僕は中間の段階を意識することなく、結論を導き出している。しかし、それでも段階は踏んでいるのだ。推理の連鎖はこうだ。『医者っぽいタイプの紳士がいる。しかし軍人のような雰囲気がある。ということは、明らかに軍医だ。彼は熱帯から来たばかりだ。彼の顔は黒い。しかしそれは彼の自然の色合いではない。手首は明白のためだ。彼は苦難と病気を経験している。彼のやつれた顔が明白に物語っている。彼の左腕は傷ついている。彼はこわばって不自然な方法で固定している。熱帯のどの場所が、ある英国軍医に、こんな苦難と腕の傷を与えうるか。明らかにアフガニスタンだ』全体の思考の連鎖は一秒とかからなかった。その後、僕は君がアフガニスタンから来たと言った。そして君は驚いた」

「説明されると単純なことだな」私は笑いながら言った。「君を見ているとエドガーアランデュパンを連想するよ。小説以外にあんな人間がいるとは思ってもみなかった」

シャーロックホームズは立ち上がってパイプに火をつけた。「君はデュパンと僕を比べることで、間違いなくお世辞を言っているつもりだろう」彼は言った。「そこで一言言わせてもらえば、デュパンは非常に無能な人物だ。15分間何も言わずにおいて、その後、出し抜けに友人の考えに割り込んだ、あのいたずらは非常に派手で薄っぺらなやり方だ。もちろん、彼にはある程度の分析的才能がある。しかしポーが想像しているような非凡な人間では全くない」

「ガボリオの作品を読んだことがあるか?」私は尋ねた。「ルコックは探偵として君のメガネにかなうかね?」

シャーロックホームズは皮肉っぽく鼻でわらった。「ルコックは惨めなほど不器用だ」彼は怒った口調で言った。「彼を誉めるとすればただ一点、あの活力だけだな。彼の本を読むとはっきりと気分が悪くなる。あれは、どのようにして犯人を特定するかという事件だったな。僕なら24時間で解決できた。 ルコックは六ヶ月程もかかった。してはならないことを教える探偵教科書として書かれたのかもしらんな」

私は、自分の称賛していた二人が、こんな横柄にあしらわれるのを聞いてすこし憤りを覚えた。私は窓のそばまで歩いて行き、立ったまま、あわただしい通りを見ていた。「この男は非常に賢いかもしれん」私は自分に言った。「しかし明らかに非常に思いあがっている」

「最近は犯罪もご無沙汰だ。」彼は不平がましく言った。「この職業で、知性があっても使い道があるのか?僕は自分が知性を持ち、それが僕の名を高めることを知っている。僕と同じ量の研究をし、そして僕のように犯罪を探知できる才能にめぐまれた者は、現在どこにも存在しないし、過去に存在したこともない。その結果はどうだ?探知する犯罪がない。せいぜい、あまりにも動機が見え透いた、ぷきような悪事だ。ロンドン警視庁の警部でさえ見抜くことができる」

私はまだ彼の横柄な話し方にイライラしていた。私は話題を変えるのが一番だと思った。

「あの男は何を探しているんだろうな?」私は屈強な男を指さして訪ねた。その男は簡素な服装の人物で、不安そうに地盤を見ながら通りの向かい側をゆっくりと歩いていた。男は大きな青い封筒を手にしており、どうやら手紙を配達しているようだった。

「あの海兵隊の軍曹上がりのことか?」シャーロックホームズは言った。

「自慢たらしいほら吹きが!」私は心の中で思った。「どんな出任せでも、私が検証できないと分かって言っているな」

その考えが私の心をよぎった瞬間、見ていた男は、この家の戸口の地盤を見つけて、道路を急ぎ足で渡ってきた。大きなノックの音が響いて、階下で低い男の声が響いた。そして重い足音が階段を上がってきた。

「シャーロックホームズさん宛てです」彼は部屋に入ってきて、ホームズに手紙を渡しながら言った。 

これは彼の鼻を折る、絶好の機会だった。彼はさっきのデタラメを言った時、こんなことになると思っていなかったはずだ。「ちょっと訊いていいかな」私は非常に穏やかな声で言った。「君の仕事は何かな?」

「便利屋です」彼はぶっきらぼうに言った。「制服は直しに出ていて、着ていませんが」

「元の職業は?」私は同居人にちょっと意地悪な視線を向けて尋ねた。

「軍曹です。英国海兵兵隊歩兵です。手紙の返事はありませんか?分かりました」

彼はかかとをきちっと合わせ、手を挙げて敬礼し、出て行った。

正直に言おう。私は、二度までもホームズの理論がいかに実用的かを証明され、仰天した。彼の分析力に対して、畏敬の念がわき起こった。しかし、心にはまだ払拭しきれない疑念が残っていた。何もかも私を混乱させるためにあらかじめ仕組まれた仕組まれた出来事だったのではないだろうか。しかしいったい何のために私をだますのか、全く想像もつかなかった。彼を見ると、すでに手紙を読み終わっていたが、目は虚ろでぼんやりしており、放心しているようだった。

「いったいどうやって推理したんだ?」私は尋ねた。

「何を推理したって?」彼は不機嫌そうに言った。

「彼が海兵隊の元軍曹だったということだよ」

「つまらないことに関わっている時間はない」彼は無愛想に答えた。その後、彼は笑顔になった。「つれない返事をしてすまない。君に思考の流れを中断されたからだが、まあ、その話もいいだろう。それでは、君は本当にあの男が海兵隊の元軍曹だったということがわからなかったんだな?」

「もちろんだ」

「推理そのものより、どうやって推理したかを説明する方がややこしいな。もし君が2タス2が4になることを証明してくれと言われたら、それが間違いのない事実だと分かっていても、ちょっと困るだろう。通りの向こう側にいても、彼の手の甲に大きな青い錨の入れ墨が見えた。それは海の香りがする。しかし態度は軍人風で、既定通りの髪形だ。これで海兵隊員だと分かる。彼はちょっと尊大で、指揮命令を出してきた雰囲気がはっきり残っている。君も、あの男の胸をはった姿勢と杖を振る仕草を見たはずだ。顔を見れば落ち着いた品の良い中年の男であることもわかる、-これら全てから僕は確信した。彼はかつて軍曹だった

「素晴らしい!!」私は叫んだ。

「たいしたことはない」ホームズは言った。しかし表情を見ると、私が率直に驚いて称賛したことが嬉しかったように思えた。「僕はついさっき犯罪がないと言った。どうやら間違っていたようだ、-これを見てみろ」彼は便利屋が運んできた手紙を投げてよこした。

「え」私はざっと目を走らせて叫んだ。「これは恐ろしい事件じゃないか!」

「すこしばかり常軌を逸しているように見えるな」彼は静かに言った。「読み上げてもらえないか?」

私が彼に読んだ手紙は次のようなものだった。

「シャーロックホームズ様」

「ブリクストンロード。ローリストン・ガーデン三番で昨夜凶悪な事件が発生しました。午前二時頃、巡回中の巡査が、この空きやに明かりがついているのを目撃し、何か怪しいことが起きたのではないかという疑いを持ちました。彼は扉が開け放たれ、表に面した家具無しの部屋の中に男性の死体があるのを発見しました。服装はきちんとしており、ポケットにイーノック・J・ドレバー、アメリカ、オハイオ、クレバーランドという入れ墨がありました。盗難にあった様子はなく、この男性の死因に関する手がかりもありませんでした。部屋には血の跡がありましたが、死体には傷がありませんでした。どうやってこの男があきやに入ったか、全く見当がつきません。実際、事件全体が謎です。もし12時までにこちらにお越し頂ければ、私は現場にいます。あなたに会うまで、私は現場にいます。あなたから連絡があるまで、全てを現状のままとしておきます。もし来られないなら、私はもっと詳しい状況を説明します。そしてあなたのご意見を伺うことができれば非常にありがたいと存じます

「敬具」

「トバイアス・グレッグソン」

「グレッグソンはロンドン警視庁で最も切れる男だ」友人は言った。「彼とれすとれーどは悪いクジをひいたな。彼らは二人とも素早く活動的だ。しかし月並みだ、驚くほどな。それにお互いに反目しあっている。社交界の二大花形のように妬み合っている。もし彼らが一緒に手がかりを追うなら、この事件はちょっと面白いことになりそうだ」

私は彼がゆうゆうとした態度で穏やかに話すのを聞いて驚いた。「どう考えても一刻の猶予もならない」私は叫んだ。「私が行って辻馬車を呼んでこようか?」

「行くべきかどうか、決心がつかないな。僕は手がつけられないほど怠惰な人間だ。誰よりもね、-気分が乗ったときは、活動的になれる時もあるが」

「これは君が望んでいた絶好の機会じゃないのか」

「ワトソン、それが僕にとってなんになる?僕がこの事件を解決したとしよう。グレッグソン、レストレード、そして他の同僚が、非公式の人物によってもたらされた手柄を全部独り占めにすることになるさ」

「しかし彼は君の助けを求めているよ」

「そうだ。彼は僕が自分より優れていることを知っている。そして僕に対してはそれを認めている。しかし誰が別の人間にそれを認めるくらいなら、自分の舌をひきぬくだろう。しかし、行って覗いてみるのも悪くないか。僕は自分の趣味のためにやってみよう。もし他に何もなくても彼らを笑ってやれるかもしれないな。行こう!」

彼はやる気のない態度から、一点して活動的な発作が起きたような雰囲気になり、慌ててコートを着て、バタバタしはじめた。

「君も帽子をかぶって」彼は言った。

「僕に着てほしいのか?」

「そうだ。他にすることがなければな」1分後、我々はものすごい勢いでブリクストン・ロードに向かう馬車に並んで乗っていた。

キリが立ちこめた曇り空の朝だった。屋根の上に茶色いベールが立ちこめ、その下にある泥色の通りを写しているように見えた。我が友人は最高に上機嫌で、クレモナのバイオリンや、ストラデバリとアマーティの違いについてしゃべり続けた。私は無口だった。どんよりした天気と、これから向かう先の陰気の仕事で、憂鬱になっていたのだ。

「君は、目の前の問題についてあまり考えていないようだが」私は遂にホームズの音楽論考をさえぎっていった。

「まだデータがない」彼は答えた。「全ての証拠をつかむ前に理論を組み立てるのは大きな誤りだ。ゆがんだ見解になる」

「データはすぐに手に入るだろう」私は指で示しながら言った。「これがブリクストンロードだ。そしてもし間違いがなければ、あれが問題の家だ」

「そうだな。止めろ、御者、止めろ!」家はそこからまだ百ヤードはあったが、彼は降りるといってきかず、残りは徒歩で行くことになった。

第三ローリンストンガーデンは、不気味でおどろおどろしい建物だった。それは通りから少し入り込んだところに建っている四軒のうち、一軒だった。人が住んでいる家が二軒で、空きやが二軒だった。空きやは一階かれ三階まで、虚ろで物寂しく陰気な窓が並んでおり、汚れた窓ガラスの所々に「貸家」の看板が白内障のようにぼんやりと浮かんでいる以外、何も見えなかった。家と通りの間の小さな庭には、ところどころ色の悪い草が生い茂っていた。その庭を横切って黄色い色の細い道が通っていた。

道は、土と砂利を混ぜたものでできているらしかった。昨夜中降り続いていた雨に濡れて、どこもかしこもびしょびしょだった。庭の境界には三フィートの高さの煉瓦塀があり、その上に木製の手すりがついていた。この塀に屈強な巡査がもたれかかっていて、その周りに少人数の野次馬が固まりになっていた。彼らはクビをつきだして目をこらして、中で起こっていることをちょっとでも見ようと、無駄な努力をしていた。

私は、シャーロックホームズがただちに家の中に駆け込んで、すぐこの事件の調査に入るものと予想していた。彼の態度はそれまでと変わらないように見えた。この状況下では、私には気どっているように見えたほど彼は無頓着な様子で、歩道をゆっくり行ったりきたりし、地面、空、向かい側の家、一連の手すりをぼんやりと見た。この調査を終えると、彼は視線を地面からはなさずゆっくりと小道を進んだ。小道というよりも脇に生えている草の上を歩いていた。彼は二度立ち止まった。そして一度、彼はほほえみ、満足そうな叫びを上げるのが聞こえた。ぬれた粘土っぽい土の上にたくさんの足跡が残されていた。しかし警察がその上をいったり来たりしていたので、ホームズがそこから何が読み取れるのか、見当もつかなかった。それでも彼の観察力がいかに鋭く、素早いかということを思い知らされていたので、私には何も見えていなくても、ホームズがそこから非常に多くの情報を読み取れるのは間違いなかった。

我々は家の戸口で、手帳を手にした男と出会った。背が高く、顔は白く、髪は亜麻色だった。彼は駆け寄ってくると、興奮してホームズの手をしっかりと握った。「お越しいただいて本当にありがとうございます!」彼は言った。「何もかもそのままの状態で残しています」

「あれはどうなんだ!」ホームズは小道を指して答えた。「もし野牛の群れが通っても、これ以上めちゃめちゃにはできん。しかしグレッグソン、当然自分なりの結論が出たから、君はこれを許可したんだろうな」

「私は家の中でやることがいっぱいあったので」警部は言い訳するように言った。「同僚のレストレードもここに来ています。この件については彼に任せていました。」

ホームズはちらっと私を見て皮肉っぽく眉をつりあげた。「君とレストレードのような男が現場にいれば、第三者が発見することはほとんどないだろうな」彼は言った。

グレッグソンは満足したように手をこすり合わせた。「私はできることは全部やったと思っています」彼は答えた。「しかし奇妙な事件で、あなたがそういう事件に興味があると知っていたので」

「ここに辻馬車に来たのではないな?」ホームズは尋ねた。

「ええ」

「レストレードも?」

「そうです」

「それでは中に入って部屋を見よう」彼はこんな一貫性のない話をすると、スタスタと家の中に入っていった。グレッグソンが後を追ったが、驚きを隠せない表情だった。

ほこりっぽい、むき出しの板の短い廊下が台所と家事室まで続いていた。廊下の左右に一つずつ、二つの扉があった。その一つは明らかに何週間もしまったままだった。もう一つは居間に続いており、そこが謎めいた事件が起きた部屋だった。ホームズはそこに足を踏み入れ、私は彼に続いた。死体が中にあると思うと、重苦しい気分だった。

そこは広い四角い部屋だった。家具が何もないので余計に広く見えた。趣味の悪いけばけばしい壁紙がはられていたが、所々白いカビが生えていた。あちこちに大きな細長い紙片が、壁からはがれて垂れ下がり、裏側の黄色っぽい漆喰が覗いていた。扉の反対側に派手な暖炉があり、その上に人造大理石のマントルピースがあった。その一方の端に、赤いロウソクの燃えさしが置かれていた。一つだけしかない窓は非常に汚れていて、にじんだように物の見分けがつきにくく、鈍い灰色を帯びた光は部屋全体を覆う分厚い埃の層でよけいに灰色がかって見えた。

こういう細かい点は、何もかも後になって気付いたものだった。部屋に入った時、私の注意は床の上に倒れている、不気味な動きの無い身体に引きよせられていた。虚ろな、焦点の定まらない目が変色した天井をじっと見ていた。その男は年齢43から44歳くらいで、中背で広い肩幅、細かくカールしたクロガミに短い髭をはやしていた。男は分厚いブロードの上着とベストと明るい色のズボンを着ていた。そして襟と袖口は染み一つなかった。よくブラシがかけられて整えられた帽子が、近くの床に落ちていた。手は握りしめられ腕は拡げられていた。一方、下肢は死に際の苦悶が耐え難いものであったかのようにもつれあっていた。こわばった顔には、苦悶の表情があり、そして私には、これまで見たこともないような憎しみの表情が現れているように感じられた。この不愉快な恐ろしい顔のゆがみと、狭い額・重い鼻・突き出た顎とがあいまって、まるで奇妙な猿か類人猿のような形相になっていた。その印象は、のたうつような不自然な姿勢によって、さらに強められていた。私は、色々な死体を目にしてきたが、このロンドン郊外の主要幹線道路の一つに面した暗い汚れた部屋の中以上に、恐ろしい形相の死体に出会ったことはなかった。

あいかわらず痩せたネズミのようなレストレードが、戸口の側にたっており、ホームズと私に挨拶した。

「この事件は騒ぎになりますね」彼は言った。「これまで見た中で一番です。ベテランの私が見た中でね」

「手がかりはないのか?」グレッグソンが言った。

「まったく」レストレードが相づちを打った。

シャーロックホームズは死体に近寄って跪き、熱心に調べた。「どこにも怪我がないというのは確かか?」彼はそこら中落ちている血痕や血しぶきを指さして尋ねた。

「間違いありません!」二人の警部は叫んだ。

「ではもちろん、その血は第二の人物のものだ、-もしこれが殺人ならおそらく殺人犯のものに違いない。これはユトレヒトで1834年に起きたヴァン・ジャンセンにまつわる状況を思い起こさせるな。この事件を覚えているか、グレッグソン?」

「いいえ」

「読んでおくことだ、-本当にそうするべきだ。太陽の下に新しいものは何もない。これまでもいつもそうだった」

話しながら、彼は素早い指をあちらこちらへと、隅々まで走らせた。私が既に述べたのと同じ、遠くを眺めるような視線のまま、彼はてざわりを確かめ、押し、ボタンを外し、調べた。この調査はあまりにも手早く、彼がどれほど詳細な調査をしているか、見ていてもほとんど分からないほどだった。彼は最後に死体の口の臭いを嗅ぎ、エナメルの靴底をちょっと見た。

「死体はまったく動かしていないな?」彼は尋ねた。

「調査に必要な範囲以上には」

「もう安置所に運んで良いよ」彼は言った。「これ以上何も見つけられるものは無い」

グレッグソンは担架を用意しており、四人の部下が部屋に入ってきて、男を持ち上げ、運び出した。死体を持ち上げたとき、指輪が落ちて床を転がっていった。レストレードはそれをつまみあげ、当惑したような表情で見つめた。

「ここに女がいたな」彼は言った。「これは女の結婚指輪だ」

彼はそう言いながら、指輪を手のひらにのせて差し出した。我々は全員彼の周りに集まってそれをじっと見た。簡易な金の指輪だったが、女性の結婚指輪であることは間違いなかった。

「これで事態が複雑になりましたね」グレッグソンは言った。「間違いなく、以前より複雑になった」

「簡単になっていないという確信があるのか?」ホームズは言った。「指輪を眺めていても何にもならない。ポケットから何が見つかっているんだ?」

「全部ここにあります」グレッグソンは、階段の一番下の段に雑然と並べられた物品を指さして言った。「金の時計、番号は97163、ロンドンのバラードのものです。時計用の金鎖、非常に重くて、メッキではありません。金の指輪、フリーメーソンの図柄。金のピン、-ブルドッグの頭がついていて、目はルビーです。ロシアの皮製トランプ入れで、中はクリーブランド、ドレッパーのイーノックJ・のトランプが入っています。下着のE・J・Dに対応しますね。財布はなく、裸で7ポンド13シリング。見返しに、ジョセフ・スタンガーソンの名前があるボッカチオの『デカメロン』の文庫版。手紙が2通、-一つはE・J・トレバーで、もう一つはジョセフ・スタンガーソン

「住所は?」

「ストランドのアメリカ証券取引所、-気付です。両方ともガイソン汽船会社からのもので、リバプール発の船の出航についてのものです。この不幸な男がちょうどニューヨークに戻ろうとしたのは確かです」

「このスタンガーソンという男について何か調査をしたか?」

「すぐにやりました」グレッグソンが言った。「私は全ての新聞に広告を出させました。そして部下の一人がアメリカ証券取引所に行っていますが、まだ帰ってきていません」

「クリーブランドに連絡は?」

「今朝電報を入れました」

「どんな風に問い合わせをしたんだ?」

「状況をそのまま詳しく説明しました。そして何か有益な情報があればありがたいと書きました」

「君が決定的だと思った点について特に何か尋ねたりはしなかったのか?」

「スタンガーソンについて聞きました」

「他には?事件全体の急所と見られる事実は書いていないのか?もう一度電報を打つつもりはないのか?」

「書くべきことは何もかも書きました」グレッグソンはむっとした声で言った。

シャーロックホームズは一人含み笑いをした。そして何か言おうとしたように見えた。その時、我々がホールでこの会話をしている最中、正面の部屋に行っていたレストレードが横柄な自己満足した態度で手を越すりあわせながら現れた。

「グレッグソン」彼は言った。「私は今、最高に重要な発見をしたところだ。これはもし私が壁を慎重に捜査していなかったら、見過ごされていたかもしれないものだ」

話しながらこの小さい男の目が輝いた。彼は明らかに同僚に一本取ったという歓喜を押し殺した様子だった。

「こちらに来てくれ」彼は慌ただしくその部屋に戻りながら言った。恐ろしい収容者が取り除かれて、その部屋の空気は前より澄んだように感じられた。「さあ、そこに立って!」

彼は靴でマッチを擦り壁に向かって掲げた。

「これを見ろ!」彼は勝ち誇って言った。

私はこの部屋の説明をした時、部分的に壁紙がはがれ落ちていたと書いた。部屋のこの一角は特に大きな部分がはがれ、ざらざらした黄色い漆喰部分が四角く見えていた。このむき出しになった部分に、赤い血文字で一つの単語が殴り書きされていた。

RACHE

「これをどう思う?」警部は芸人が芸を披露するような雰囲気で叫んだ。「これは部屋の最も暗い隅にあったから見過ごされていた。そして誰もそこを見ようとは思わなかった。殺人犯は、自分自身の血でこれを書いた。壁を滴るこの汚れを見ろ!これでともかく自殺の線はなくなった。なぜ書く場所として、この隅が選ばれたか、教えよう。マントルピースの上のロウソクを見ろ。これを書いたとき、あれに火がついていた。そして、あのロウソクがともされていれば、この隅は、壁の一番くらい部分ではなく、一番明るい部分だったはずだ。」

「君が見つけたものに、今なんの意味がある?」グレッグソンは、それがどうしたというような声で尋ねた。

「意味?わからんのか。その意味は、これを書いたやつが、女性名のレイチェル(RACHEL)と書くつもりだったということだ。しかし、この男、いや女かもしれんが、は書き終わる前に邪魔された。覚えておくといい。この事件が解決されたとき、レイチェルという名前の女性が事件に関係していた事が分かるだろう。お笑いになるのはおおいに結構だ、シャーロックホームズさん。あなたは非常に頭が切れるかもしれない。しかし所詮、経験を積んだ猟犬にはかなわない」

「本当に申し訳ない!」急に大爆笑してレストレードの機嫌を損ねていたホームズが言った。「確かに君はこれを見つける手柄をたてた。そして言う通り、それは昨夜の事件の関係者によって書かれたという状況証拠が揃っている。僕はまだこの部屋を調査する時間がなかった。しかし失礼してこれから調査することにしよう」

彼はこう言いながら、ポケットから巻き尺と大きな丸い拡大鏡をさっと取り出した。この二つの器具を手に彼は音もなく部屋の中を駆け回った。時には立ち止まり、まれにひざまずき、一度はうつぶせに寝そべった。彼はこの仕事に非常に熱中していたので、我々の存在を忘れているようだった。彼はその間ずっと小さな声でぶつぶつと独り言を言い、次々に、感嘆のうめき声、口笛、進捗と希望を思わせる小さな叫び声を上げ続けていた。その姿を見れば否応なしに良く調教された純血種の猟犬を思い起こさずにはいられなかった。まるで、熱心に鼻を鳴らし、見失った臭いに出会うまで、獲物が隠れた藪の中を素早く回る猟犬そのものだった。20分以上、彼は調査を続けた。私には完全に見えない痕跡と痕跡の間の距離を非常に気を遣って几帳面に計測した。そして時には同じように理解に苦しむ態度で巻き尺を壁にあてた。ある場所で、彼は床から慎重に小さな灰色の埃をあつめ、封筒に入れてしまった。最後に彼は拡大鏡で壁の単語を調べ、一つ一つの文字を非常に緻密に、正確に、徹底的に、調査した。それが終わると、彼は巻き尺と拡大鏡をポケットに戻した。満足した様子だった。

「天才とは無限に努力できる能力だと言われるが」彼はほほえんで言った。「これは非常に悪い定義だ。しかしそれでも探偵の仕事にはこれが当てはまる」

グレッグソンとレストレードは、アマチュア仲間の行動を非常に興味深く、-いくばくかの軽蔑をこめて-、じっと見ていた。しかし、どうやら二人は、私がジョジョに気付き始めていたある事実を正しく認識できなかったようだ。それは、シャーロックホームズのどんなわずかな動作も、すべて何かはっきりした実用的な目的があるということだ。

「何か分かりましたか?」二人が尋ねた。

「もし僕がわざわざでしゃばって手伝いすれば、せっかくの手柄を横取りするかもしれない」ホームズは言った。「君たちは非常によくやっていたので、誰かに横やりを入れられたら不愉快だろう」話しているとき、彼の声は皮肉たっぷりだった。「今後の君たちの捜査状況を教えてもらえば」彼は続けた。「喜んで僕が出来る限りの手助けをさせてもらうよ。それまでの間、僕は死体を見つけた巡査と話しがしたい。名前と住所を教えてもらえるか?」

レストレードは手帳に目をやった。「ジョン・ランセ」彼は言った。「彼は現在非番です。ケンジントン・パーク・ゲイトのオードリー・コート46に行けば会えるでしょう」

ホームズはこの住所を書き留めた。

「行こう、先生」彼は言った。「行ってこの男に会おう。そうだ、ひとつこの事件の助けになるかもしれないことを言っておこう。」彼は二人の警部の方を向いてこう続けた。「これは殺人だ。そして殺人犯は男だ。犯人は身長が6フィート以上の壮年の男だ。背丈の割には足が小さい。ごわごわした爪先が角張った靴をはいていて、トリチノポリの葉巻を吸う。犯人は殺された男と一緒に四輪の辻馬車でここに来た。その馬車をひいていた馬は、蹄鉄の3つが古く、右前足の一つが新しい。殺人犯はまず間違いなく血色のよい顔で、彼の右手の爪は非常に長い。これはちょっとした目安に過ぎないが、君たちの手助けになるかもしれない」

レストレードとグレッグソンは疑わしそうに笑って、お互いを見やった。

「この男が殺害されたとすれば、どういう方法で?」レストレードは聞いた。

「毒だ」シャーロックホームズはぶっきらぼうに言った。そしてつかつかと歩いて行った。「もう一つ、レストレード」彼は戸口で振り返って、付け加えた。

「『Rache』はドイツ語で『復讐』だ。レイチェル嬢を探して時間を無駄にしないようにな」

こう言い残すと、彼は口をぽかんと開けた二人のライバルを残して立ち去った。

ローリンストンガーデン3番を出たのは一時だった。シャーロックホームズは私を最寄りの電報局に連れて行き、そこで長い電報を打った。それから辻馬車を呼び止め、レストレードが言った住所に行くように御者に伝えた。

「証言は直接聞くに限る」彼は言った。「実際、僕は完全にこの事件を把握している。しかしそれでも知るべきことは知っておくことが良い」

「君には驚かされるよ、ホームズ」私は言った。「君とはいろいろと細かい話をしたが、きっと口で言うほど確信があるわけじゃないんだろう」

「間違いようがない」彼は言った。「僕があそこに言ってまず目にしたのは、縁石の側に辻馬車の車輪の跡が2本残されていたことだ。昨夜まで、一週間はアメが振っていなかった。だからあれほど深い後を残したのは、昨夜通った馬車のはずだ。馬の蹄も残っていなかった。そのうちの一つの輪郭が他の3つよりも、明らかにくっきりとしていた。これはそれが新しい蹄鉄だということを示している。辻馬車は雨が降り始めていたからあの家に来て、そして午前中その姿を見たものはいない、-僕はグレッグソンに確かめた-。ということは、馬車が来たのは夜中だ。したがって、その辻馬車に乗って二人の人物があの家までやってきたのだ」

「単純な話のようだな」私は言った。「しかしもう一人の男の身長に関しては?」

「男の身長は、十人中九人までは歩幅からわかる。計算は単純そのものだが、君に計算式を言っても煩わしいだけだろう。そとの地面と部屋の埃の上、僕はこの両方で男の歩幅を図った。それから計算式にあてはめて計算した。人間が壁に字を書くとき、本能的に目より高い位置に書く。あの文字を床から6フィートをちょっと越えたところにあった。簡単な話だ」

「年齢は?」私は尋ねた。

「もし、男が全く無理をせずに4フィート半の歩幅で歩けるなら、完全にもうろくしているはずはない。これは彼らが横切ったと思われる庭の道にあった水たまりの幅だ。エナメル靴は周り道をしていた。そして四角い爪先は上をまたいでいた。ここにまったく曖昧な点はない。僕は、あの記事の中で提唱していた観察と推理の手法のいくつかを、日常生活に適用しただけだ。他にわからない点はあるか?」

「指の爪とトリチノポリは?」私は言った。

「部屋の文字は、人差し指に血をつけて書かれていた。拡大鏡を使うと確認できるが、書く際、漆喰がわずかにひっかかれていた。もし男の爪が切り詰められていればそのようにならなかったはずだ。僕は床に散らばった灰をすこしあつめた。それは暗い色でパサパサしていた、・・・こんな灰はトリチノポリからしか出ない。僕は葉巻の灰に関して特に研究してきた。実際、この主題で論文を書いたことがある。自分で言うのもなんだが、葉巻でも煙草でも、今ある銘柄の灰ならどれでも、僕は一目で見分けがつく。熟練の探偵とグレッグソンやレストレードのような人間との差は、こういうなんでもない、細かい点にあるのだ。」

「血色の良い顔は?」私は尋ねた。

「ああ、これはどちらかといえば大胆な推測だ。しかし自分が正しいことは疑っていないがね。君はこの事件の現場に居合わせたんだから、わざわざ僕に尋ねることもないだろう」

「私は額を手でぬぐった。」「頭がクラクラする」私は言った。「そのことを考えれば考えるほど、余計に謎が深まってくる。どうやって二人の男が、-もし二人の男だとすれば-、ある空きやに入ったのか。彼らを乗せた御者に何が起きたのか。どうやって一人の男がもう一人に無理矢理毒を飲ませることができたのか。どこから血が出たのか。この殺人犯の目的は何だったのか。強盗が目的でないのなら、どうやって女性の指輪があったのか。なによりも、なぜ第二の男は去る前にドイツ語のRACHEという単語を書かねばならなかったのか。率直に言って、これらの事実を全部満足させる理論は全然思いつかない」

ホームズは満足そうにほほえんだ。

「君は現状の難点について、簡潔に上手くまとめあげたな」彼は言った。「まだはっきりしないことがたくさんあるが、主要な事実に関しては僕は完全に見解を定めている。レストレードの発見に関して言えば、あれは社会主義や秘密結社を臭わせることによって警察の目を間違った方向に向けさせようとした、ただの目くらましだ。あれはドイツ人が書いたものではない。君も気付いたかもしれないが、あのAはちょっとドイツ風を真似て書いたものだ。現在、本物のドイツ人なら間違いなくラテン文字で書く。だからあの文字はドイツ人が書いたものではなく、ドイツ人の真似をしようとして、不器用にやりすぎた人間が書いたものと判断しても、間違いではなかろう。これは、捜査を間違った方向にそらせようという、単純な計略だ。僕はこの事件についてこれ以上言わないよ、先生。手品師はいったんタネを明かしたら、君は結局、僕が普通の人間に過ぎないという結論を出すだろう」

「そんなことは絶対ない」私は答えた。「君は探索の技術を、世界で誰も成し遂げられなかった精緻な化学の域にまで高めた」

ホームズは私の言葉と私の真摯な話し方に喜んで顔を赤らめた。すべての女性が自分の美にタイして、持っている感受性と同じように、彼も自分の技術にタイするお世辞に敏感がということを、私は既に気付いていた。

「もうひとつ別のことを話しておこう」彼は言った。「エナメル靴を履いた人物とつま先が角の靴を履いた人物は同じ辻馬車で来た。そして彼らはこれ以上ないくらい親しく道を一緒に歩いた、-まず間違いなく腕を組んでいた。部屋に入ったとき、彼らは部屋を行ったりきたりした、-いや、というより、エナメル靴を履いた方はじっと立ち、つま先が角の靴を履いた方がいったりきたりした。僕はそれを埃から読み取ることができた。そして僕は、彼が歩いているうちにどんどんと興奮してきたのも読み取れた。歩幅が広くなっているのがそれをしめしている。彼はずっと話し続けた。そして間違いなく、激しい怒りを感じるまでに感情が高ぶってきた。そのとき悲劇が起きた。これで、僕が分かっていることは全部話した。残りはただの憶測だ。しかし、推理の出発点としては、いいたたき台ができた。急がんといかんな。今日の午後はノーマン・ネルダを聞きに、ハレのコンサートにいきたい」

こういう話をしている間に、辻馬車は汚い通りとわびしい脇道を次から次へと通り抜け、縫うように走っていた。最もわびしい通りにきたとき、御者は突然馬車をとめた。「あれが、オードリー・コートです」彼は濁った色をした煉瓦がならぶ中に見える細い隙間を指差して言った。「戻ってくるまでここで待っています」

オードリーコートは魅力のある場所ではなかった。狭い道を行くとむさ苦しい住居に囲まれた石敷きの中庭に出た。我々は、汚い子供達の群れの間をゆっくりと進み、色あせた下着を干したひもの下を抜け、46番地にたどりついた。戸口にランスという名前がほられた真鍮の小片が貼り付けられていた。尋ねてみると巡査は寝室にいたので、我々は小さな客間に通され、彼が出てくるのを待った。

まもなくうたた寝を邪魔されてちょっと不機嫌そうな巡査が現れた。「警察に報告書を提出していますが」彼は言った。

ホームズはポケットから半ソブリン金貨を取り出し、考え込むようにもてあそんだ。「私たちは全部君の口から聞きたいと思ってね」彼は言った。

「話せることは何でも喜んで話します」巡査は金貨を見つめながら答えた。

「ただ、君の言葉で起きたことを聞かせてほしいだけだ」

ランセは馬の毛を詰めたソファに腰をかけた。そして何一つ話漏らさないと決心したように眉をひそめた。

「最初から話します」彼は言った。「私の巡回時間は夜十時から朝六時まででした。十一時にホワイトハートでケンカがありましたが、それ以外は穏やかな巡回でした。一時に雨が降り始めました。私はホランド・グローブが持ち場のハリー・マッチャーと出会いました。我々は一緒にヘンリエッタ街の角にたってちょっと話をしました。多分2分かそこらだと思います。その後、私はブリクストン・ロードに異常がないか見てまわろうと思いました。そこは非常に汚く寂しいところでした。通りを歩いていても、辻馬車が1・2台通りすぎただけで、人気はありませんでした。ここだけの話ですが、私はホット・ジンがあれば、たまらないだろうなと考えながら、ゆっくりと巡回しました。突然あの家の窓からキラッとした光が目に飛び込んできました。私はあのローリンストン・ガーデンの二軒の家が空きやだと知っていました。最後の住人の一人が腸チフスで死んだにもかかわらず家主が下水を整備しようとしないのが原因でした。だから窓に明かりを見えたとき、私はぎょっとしました。そして何かよからぬことが起きているという疑念が湧きました。私は扉の前にいったとき・・・」

「君は立ち止まり、庭の入り口のところに引き返した」ホームズが言った。「何のためにそうしたのだ?」

ランセは驚いて飛び上がった。そしてこの上なく驚いた顔でシャーロックホームズをじっと見た。

「驚いた。その通りです」彼は言った。「どうやってあなたがそれを知っているのか、見当もつきませんが。私は扉の前までいったとき、あまりに静かで物寂しいので、やはり誰かと一緒に入ろうと考えました。私はこの世のことなら何も怖くないのですが、ふと、あれは腸チフスで死んだ男が自分を殺した下水を調べているのかもしれないという考えが浮かびました。こう考えるとちょっと気が変わって、私はマーチャーのランタンが見えないかを確認するために門のところまで戻りました。しかしマーチャーばかりか、他の誰の姿もありませんでした。」

「通りには誰もいなかったのか?」

「人っ子一人、犬さえもいませんでした。それから私は勇気を振り絞って戻り、扉を押し開けました。中はどこも静かでしたので、私は明かりが灯っていた部屋に入りました。マントルピースの上でロウソクが燃えていました。-赤いロウソクです-、そしてその光で私は見ました・・・」

「結構、僕は君が見たものは全て知っている。君は何周か部屋の中を周り、死体にひざまずき、それから部屋を通って台所の扉を開けようとした。その後で・・・」

ジョン・ランセはギョッとした顔でさっとたちあがった。疑うような目つきだった。「どこに隠れて一部始終を見ていたんだ?」 彼は叫んだ。「いくらなんでも、ちょっと知りすぎてやしないか」

ホームズは笑いだし、テーブルの向こうの巡査に名刺を投げた。「僕を殺人容疑で逮捕しないでくれ」彼は言った。「僕は猟犬だが狼ではない。グレッグソンかレストレードが保証してくれる。さあ、続きを話してくれ。その後どうした?」

ランセは座り直したが、戸惑ったような表情はそのままだった。「私は入り口に戻って笛を鳴らしました。それでマーチャーと他に二人が現場に来ました」

「そのとき、通りには誰もいなかったのか?」

「ええ、そうです。少なくとも役にたつような人間は」

「どういう意味だ?」

巡査はにやりとした。「巡回中に酔っ払いはたくさん見ていますが」彼は言った。「あいつほどベロベロに酔ったやつは見たことありません。私が出て来たとき、門扉の側に手すりにもたれかかり、声を限りにコロンバインの流行りうたかなにかを歌っていました。この男は足腰たたず、全然助けになりませんでした

「どんな感じの男だった?」シャーロックホームズがきいた。

ジョン・ランセはこの脱線にちょっとイライラした様子だった。「彼はこれ以上ないほど酔っ払っていたようです」彼は言った。「もし警察が非常にバタバタしていなかったら、留置場で目を覚ましていたはずです」

「顔や服装はちゃんと覚えているのか?」ホームズはイライラして割り込んだ。

「もちろんです。マーチャーと二人でその男を立たせたんですから。背の高い男でした。赤ら顔で、顔の下半分はマフラーが巻いてありました・・・・」

「もういい」彼は叫んだ。「その男はそれからどうしたんだ?」

「酔っ払いの面倒を見るいわれはないでしょう」巡査は不満そうな声で言った。「ちゃんと家に帰る道を見つけたと思います」

「服装はどんなだった?」

「茶色いコートを着ていました」

「鞭を持っていなかったか?」

「鞭ですか・・・・いいえ」

「どこかに置いていたに違いない」ホームズはつぶやいた。「もしかしてその後、辻馬車が通らなかったか?」

「いいえ」

「この半ソブリンは君の物だ」ホームズは立ち上がって、帽子を取りながら言った。「残念だが、ランセ、君は警察で出世しそうもないな。その頭は飾りではなく使うための物だ。君は昨夜、巡査部長の袖章をもらえたかもしれないのだ。君が手にしていた男は、この事件の手がかりを持った男だ。そして我々が今探している人物だ。今更何を言っても始まらないが、そうだったことは言っておく。先生、行こう」

我々は一緒に辻馬車に向かって出て行った。情報提供者は疑っているようだったが、明らかに落ち着かない様子だった。

「大馬鹿物が!」ホームズは我々の家に帰る途中、苦々しげに言った。「彼があんな千載一遇の幸運を手中にしていたことを考えてみろ。そしてそれをまったくいかせなかったことを」

「私はまだ見当がつかないが。確かにその男の外見は、君が事件で想定した第二の人物と同じだ。しかしなぜ彼はそこをさった後、もう一度あの家に戻ってくる必要があったのだ?犯罪者がそんなことをするはずがない」

「指輪だよ、あの指輪。あれがかれを呼び戻したのだ。 あれが彼を呼び戻したのだ。もし他に彼を捕まえる方法がなくても、いつでもあの指輪の線でおびきよせることができる。絶対に捕まえてやる、先生-僕は自分が捕まえる方に2対1 で賭けてもいい。君には礼を言わなければならない。君がいなかったら、僕がこれまで出会った中で最高に素晴らしいこの調査対象を逃がしていたかもしれない。緋色の練習作というのはどうだ?ちょっとした芸術の隠語を使っていけないことはないだろう。無色の人生の糸カセを殺人という緋色の糸が通っている。僕らの責務はそれをほぐすことだ。そしてそれを分離し、隅から隅まで正体を明かすことだ。昼食の時間だ。それからノーマンネルダだ。彼女の音の立ち上がりと運弓は素晴らしい。彼女が本当に素晴らしく演奏する、あのショパンの素晴らしい曲は何だったかな。トゥラ~ラ~ラ~リア~レイ」

辻馬車のシートにもたれ、このアマチュア探偵はヒバリのように楽しそうに歌った。その間、私は人間の心の多面性に思いをめぐらせていた。

身体の弱った私にとって午前中の活動は激しすぎたので、午後にはヘトヘトになっていた。ホームズがコンサートに出かけたあと、私はソファに寝転んで二時間ほど眠ろうとした。しかし無駄な試みだった。私は全ての出来事に非常に興奮しており、驚くほど奇妙な空想や憶測が次々にわき起こった。目を閉じるたびに、殺された男のゆがんだひひのような顔つきが眼前に浮かび上がってきた。その顔の印象があまりにも邪悪なので、こんな顔の持ち主をこの世から取り除いた人物に感謝する気になってしまうのをこらえきれなかった。もし人間の表情の中に、この上なく有害で典型的な邪悪を示す表情があるとすれば、それは間違いなくクリーブランドのイーノック・J・ドレバーの顔に刻まれていたであろう。しかしもちろん、裁きは公正につけなければならず、仮に被害者が悪人であったとしても、法の目からは容赦されないことは、よくわかっていた。

この事件を考えれば考えるほど、ホームズの仮説がとんでもないものに思えてきた。この男は毒を盛られたらしい。私はホームズが口の臭いをかいだのを覚えている。そして間違いなくそれを何か疑う臭いをかぎとった。しかし、もし毒殺でなければこの男の死因は何か。傷は無く、クビをしめられた跡もないのだ。だが一方で、床の上にあれほど多量に落ちていたのは誰の血か。格闘した形跡は全くなかったし、被害者は相手を傷つける可能性のある武器も持っていなかった。これらの疑問が解消されない限り、ホームズも私もぐっすり眠れそうにないと思った。あの落ち着いた自信ありげな態度で、私は彼が既に全ての事実を説明する理論を組み立てていると確信した。しかしそれがどんなものか、私にはまったく想像もつかなかった。

彼は非常に遅くになって戻ってきた。あまりにも遅かったので、コンサート以外にも何か用事があったことがわかった。彼が帰ってきたとき、すでに夕食はテーブルに並べられていた。

「素晴らしかったよ」彼は自分の席に座りながら言った。「ダーウィンが音楽について語ったことを覚えているか?彼の話では、人類が音楽を作ったり鑑賞したりする能力は、会話能力を獲得するずっと以前から存在していたらしい。人間が音楽にこれほど敏感に影響されるのは、多分それが原因だ。世界がまだ産声をあげたばかりの混沌とした時代の記憶がぼんやりと我々の心に残っているのだ」

「やけに壮大な考えだな」私は言った。

「自然を解釈しようとすれば、人間の考えも自然のように壮大になるさ」彼は答えた。「どうした?ちょっといつもと様子が違うな。ブリクストンロードの事件で動揺したか」

「実はそうなんだ」私は言った。「アフガン戦争に行って、もっとひどい経験を山ほどしてきたんだがな。マイワンドでは同僚がバラバラになったのを経験してきたが、動揺などしなかった」

「わかるな。この事件には、想像力を刺激する謎がある。想像力がなければ恐怖は生まれない。夕刊を見たか?」

「いや」

「この事件をなかなかうまく説明した記事がある。この記事は、男が持ち上げられたとき、女性の結婚指輪が床に落ちたことには触れていない。これが書かれていないのは好都合だ」

「なぜだ?」

「この広告も見てみろ」彼は答えた。「僕が事件の直後、朝刊全紙に掲載させた」

彼は新聞を私に投げてよこした。私はシメされた場所に目を走らせた。それは「取得物」欄の最初の広告だった。「ブリクストンロード、今朝」こう続いていた。「簡素な金の結婚指輪。ホワイトハート・タバーンとホランド・グルーブの間の道路で発見。今晩8時から9時までの間にベーカー街221Bワトソン博士まで」

「君の名前を使って申し訳ない」彼は言った。「もし自分の名前を使うと、馬鹿なやつが感づいて、口出ししてくるかもしれんからな」

「それはかまわない」私は答えた。「したし誰かが問い合わせてきたとしても、僕は指輪を持っていないぞ」

「いや、もってるよ」彼は私に指輪を手渡しながら言った。「これでうまくいくだろう。ほとんどそっくりだ。」

「君は誰がこの広告に答えると予想しているんだ?」

「もちろん茶色いコートの男、・・・・血色よい、爪先が四角い我々の友人だ。もし彼が自分で来ないとすれば、共犯者を送り込むだろう」

「それは危険すぎると思うんじゃないか?」

「そんなことはない。もしこの事件に対する僕の見方が正しければ、-そして僕はあらゆる面から見てそうだと信じるに足る根拠を持っているが-、この男はその指輪を取り返すためにどんな危険でもおかすだろう。僕の考えでは、彼はドレバーの死体にかがみこんだときにそれを落とし、そのときは気付かなかった。彼は家を出たあと、指輪をなくしたことに気づき、急いで戻った。しかし、ロウソクをつけたままにしておくという自分の愚かな行為によって、警官がすでに部屋にいたことに気付いた。彼は門戸に現れたために、怪しい人間として疑われる可能性があったので、酔っ払いのふりをせざるを得なかった。ここで自分を男の立場においてみよう。状況から考えれば、家を出たあと、指輪を道に落とした可能性がある。彼はこう思ったはずだ。その後彼はどうするか?彼は取得物広告に指輪がのっているかもしれないと期待して一生懸命夕刊を読んだだろう。もちろん、彼の目はこの広告にとまる。彼は大喜びする。なぜワナを恐れなければならないのか?彼の目からすれば、この指輪の発見が殺人に関係していると考える理由はまったくない。彼は来るはずだ。彼はきっとくる。一時間以内に君は彼に会うことになる」

「会ったあとどうしたらいいんだ?」私は尋ねた。

「君は僕が彼を捕まえるのを見ていればいい。武器は持っているか?」

「昔の軍隊用拳銃と銃弾が少々だ」

「掃除して弾をこめておいてくれ。犯人は自暴自棄になるかもしれない。相手が気付かぬうちに捕まえられると思うが、あらゆる事態にそなえておくのがいいだろう」

私は寝室に行って、彼の言う通りにした。私は拳銃を持ってもどってきたとき、食卓は片付けられていた。そしてホームズはせっせとバイオリンをひっかく。お気に入りの仕事をしていた。

「僕の計略は煮詰まってきたよ」私が入ると彼が言った。

 

晒し練習2 文字カウント数(文字数(スペースを含めない))

1日目 64文字
2日目 57文字
3日目 55文字
4日目 75文字
5日目 84文字
6日目 77文字
7日目 81文字
8日目 103文字
9日目 100文字
10日目 119文字
11日目 129文字
12日目 135文字
13日目 188文字
14日目 237文字
15日目 259文字
16日目 292文字
17日目 275文字
18日目 275文字
19日目 276文字
20日目 323文字
21日目 304文字
22日目 378文字
23日目 392文字
24日目 344文字
25日目 404文字
26日目 371文字
27日目 385文字
28日目 449文字
29日目 401文字
30日目 417文字
31日目 474文字
32日目 518文字
33日目 504文字
34日目 490文字
35日目 503文字
36日目 549文字
37日目 543文字
38日目 533文字
39日目 531文字
40日目 575文字
41日目 671文字
42日目 675文字
43日目 766文字
44日目 653文字
45日目 726文字
46日目 797文字
47日目 735文字
48日目 788文字
49日目 839文字
50日目 748文字
51日目 843文字
52日目 861文字
53日目 863文字
54日目 803文字
55日目 827文字
56日目 853文字
57日目 907文字
58日目 900文字
59日目 720文字
60日目 950文字
61日目 952文字
62日目 929文字
63日目 1003文字
64日目 1014文字←イマココ

 

▼親指シフト習慣化チャレンジ 65/30日目 感想

今日は昨日より「1003文字」→「1014文字」と11文字UP。(分速67.6文字)

よし、1000台突破!2日連続!

 

【今日の「強気な」なシャーロックホームズ】

もちろん、彼の目はこの広告にとまる。彼は大喜びする。なぜワナを恐れなければならないのか?彼の目からすれば、この指輪の発見が殺人に関係していると考える理由はまったくない。彼は来るはずだ。彼はきっとくる。一時間以内に君は彼に会うことになる

 

▼わからなかったこと(課題)

・分速100文字まで三ヶ月以内(八月)でいきたい

・漢字変換でミスった時が悲しい

・疲れてきた夕方あたりからタイピングミスが増えてくる

 

(3分)

 

再掲)練習メニュー

・毎日15分 タイピングの練習
・毎日15分 著作権切れの書籍(昔の本)の文章を少しずつ書いていく。
・毎日ブログ更新 日ごとに色を変えて、どれだけ進んだか確認しながら進めていく。
・タスク管理ソフト taskchuteに上記タスクを毎日ルーチンで追加
・iPhoneアプリ Dueに上記タスクを登録
・週次 スピードを効果測定、どれだけ速くなったか測定する
・習慣化アプリ Streaksに「親指シフト」追加。毎日練習ができたらチェックをつけていく

 

親指シフトの師匠

[箱] 親指シフトまとめ | [箱]ものくろぼっくす
親指シフトの師匠 ソフト設定から練習メニューの相談、間違えやすいポイント、つきやすい変なクセなどを教えてもらいました!

参考書籍)習慣化のための参考書籍

親指シフトは身体習慣なので30日で身につける!

 

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