【習慣化チャレンジ】【125/30日目】親指シフト

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習慣化チャレンジ 125/30日目

身体習慣30日にチャレンジ中です。

親指シフトのキーボードタイピング!

ブログには著作権が切れたシャーロックホームズを15分という時間の中でどこまでできたかを毎日アップしていきます。

よかったら毎日続きを見る感覚で生暖かく応援して頂けると嬉しいです。

 

晒し練習1 練習ソフト(毎回練習ソフトを最初から始め、15分でどこまでできるか?スピードよりも正確性に重点をおき、毎日初歩からスタートさせる)

1日目 練習問題16
2日目 練習問題21
3日目 練習問題23
4日目 練習問題24
5日目 練習問題24
6日目 練習問題24
7日目 練習問題25
8日目 練習問題25
9日目 練習問題27
10日目 練習問題27
11日目 練習問題28
12日目 練習問題29
13日目 練習問題30
14日目 練習問題33
15日目 練習問題33
16日目 練習問題37
17日目 練習問題36
18日目 練習問題37
19日目 練習問題38

(練習問題38 START)

20日目 練習問題56
21日目 練習問題57
22日目 練習問題57
23日目 練習問題55

 

晒し練習2(シャーロックホームズ『緋色の研究』 1日ごとに色を変えています)

第二部 聖徒の国

第一章

広大なアルカリの台地で

広大な北アメリカ大陸の中心部に、からからに乾燥し人を寄せ付けない砂漠がある。そこは非常に長い間、文明の進展を阻む障壁となっていた。シエラネバダからネブラスカまで、キタはイエローストーンリバーから南はコロラドまでは、荒廃と沈黙の地である。この恐ろしい地域全体を通して自然がどこも一様なわけではなかった。それは雪を頂いてそびえたつ山々や、暗く不気味な谷から構成されていた。ギザギザの谷を越えて勢いよく流れる河があった。巨大な平原があり、その場所は冬は雪で白く、、夏は塩っぽいアルカリの土で灰色となった。しかしこれらはすべて、不毛と、厳しさと、苦痛という共通の特徴を有していた。

この絶望の地に住むものはいなかった。ポーニー族やブラックフット族の一軍が別の猟場に行くために時々そこを横断したかもしれない。しかしこれらの最もタフな勇士でさえも、この恐ろしい大地が見えなくなり、もう一度草原に戻ると、喜びを禁じ得なかった。コヨーテが藪の間をこそこそ動き、ヒメコンドルはゆったりと羽ばたいて空を渡る。大きな灰色熊が暗い渓谷をのし歩き、岩の間から食べ物を拾い上げる。荒野の住民達は、これですべてである。

地球上で、シエラブランカの北斜面から見る以上にわびしい光景はない。見渡す限り巨大な平原が拡がっており、全ては埃まみれで、アルカリの大地が矮小化した木の茂みでつぎはぎに区切られた場所だ、水平線のかなたに山の頂が長く連なり、ゴツゴツした山頂は雪におおわれている。この広大な大地には、生命や生命に付属するものの痕跡はない。鋼色の空には1匹の鳥もなく、鈍い灰色の大地の上に動くものはなかった。まず最初に完全な沈黙があった。耳をこらしても、物音一つしなかった、この強力な荒野には、沈黙以外に何もなかった。-完全無欠の圧倒的な沈黙だった。

今、この広大な大地に生命に関するものは何もないと述べた。それは完全な真実ではない。シエラブランカ山から見下ろすと、砂漠を横切る一本の道を見るだろう。それは風に吹かれて、果てしない彼方へと姿を消している。それは多くの冒険家の車輪と足に踏みしめられた道だ。ところどころに、陽の光に輝く白い物体が散らばり、鈍いアルカリの堆積物からつきだしている。近づいて確かめてみよ!それらは骨だ。大きくざらざらしたものもあり、小さくてもっと脆いものもある。前者は牛のモノで、後者は人間のものだ。一五〇〇マイルに渡って、道ばたに倒れたものたちの散らばった残骸で、この恐ろしいキャラバンロードをたどる事ができるだろう。

1847年5月4日、この場所を見下ろすと孤独な旅行者があった。彼の風貌は、この地の霊魂か、悪魔かもしれないようなものだった。見るものは彼はが40に近い中60に近いのか、判断し難いと思っただろう。頬はこけ、表情は疲れ切っていた。そして茶色の羊皮紙のような皮膚は、突き出た骨にピンと張り付いていた。長い茶色の髪と顎髭は、あちこちに白いものが混じっていた。目は落ちくぼみ、異常な光が燃えさかっていた。ライフルを握る手は、まるで骸骨のように肉がついていなかった。男はその銃にすがって歩いたが、高い身長とがっしりした骨格は、屈強で旺盛な体質を感じさせた。しかし、衰えた顔と服によって-それは皺だらけの四肢にはぶかぶかだった-、まるでよぼよぼの老人に見えた。男は死にかけていた。餓えと乾きで死にかけていたのだ。

彼は苦労して渓谷に降り、そして水のありかを探そうというむなしい望みでこの小高い丘に登った。いま、広大な潮の大地と、はるかな険しい山の連なりが、彼の眼前に拡がっていた。水の存在を臭わせる草や木の痕跡はどこにもなかった。この広大な景色に、望みは全くなかった。北、東、西、彼は激しく問いかけるような目で見た。そして彼は、放浪が終わりに達したことに気付いた。そして、そこ、不毛の岩山で、彼はまさに死を迎えつつあった。「なぜここではいかん?20年後羽布団の上でも同じことだ」彼はつぶやいた。そして彼は大きな岩の陰に座った。

腰を降ろす前に、彼は使い道のないライフルを投げ捨て、右肩の上にかけて運んでいた、灰色の肩掛けにつないだ大きな包みも降ろした。それを下ろそうとした時、彼の体力には包みが少し重すぎたと見えて、やや乱暴に下ろした。その瞬間、灰色の包みから小さな不平の叫びがあがり、そこから非常に明るい茶色の瞳のちいさな怯えた顔と、そばかすだらけのえくぼが浮いた拳が二つ飛び出してきた。

「痛いじゃない!」非難するような子供の声が聞こえた。

「そうかい?」男は申し訳なさそうに答えた。「わざとじゃないんだ」彼はこう言いながら、灰色のショールを解き、5歳ほどのかわいらしい少女を解放した。少女の上品な靴、きちんとしたピンクのワンピース、カワイイ麻のエプロン、すべてが母親の世話を感じさせた。その子供は青白く衰えていたが、健康そうな手足は、少女がその同行者よりも苦しみを受けていないことを示していた。

「大丈夫かい?」少女がまだ後頭部をおおっている乱れた金髪の巻き毛をさすっていたので、彼は心配そうに尋ねた。

「キスしてくれたらよくなるわ」少女は男に怪我した場所をみせながら大まじめに言った。「お母さんがいつもそうしてくれたわ。お母さんはどこ?」

「お母さんは行ったよ。もうそんなに待たずに会えると思う」

「行った、え!」少女は言った。「変ね。さよならは言わなかったわ。お母さんは、ちょっと叔母ちゃんのところにお茶に行くときにでも、いつも言っていたのよ。それなのにもう3日もいないわ。ねえ、すごく喉が乾かない?飲み水か何か食べるものはないの?」

「いや、何も無いんだよ、嬢ちゃん。しばらくちょっと我慢しないと。そしたらよくなるよ。こういう風に私に頭をあずけて。そしたらちょっと楽になるだろう。唇が乾くと話がしにくいな。しかし状況がどうなっているか話すのが一番良いと思う。手に持っているものは何かな?」

「可愛いでしょ!綺麗でしょ!」少女はキラキラ光る雲母のかけらを差し上げて勢いよく叫んだ。「家に帰ったらボブお兄さんにあげるの」

「すぐにもっと綺麗なものを見るよ」男は確信を持って言った。「ちょっと待っておくれ。今から話すつもりだから、・・・河を離れたときのことを覚えているかな?」

「ええ」

「すぐに別の河に出ると考えていたんだ。しかし、何かおかしいことがあった。磁石か、地図か、何かだ。河に出会わなかった。水が底をつきた。お前のような子供のためのほんの僅かを除いて、それで、・・・それで・・・」

「だから体を洗えないのね」少女は彼の垢だらけの顔を見ながら重大そうに割り込んだ。

「そうだ、飲み水も無いんだ。ブレンダーさん、彼が最初に行った。その次にインディアンのピート、それからマクレガー夫人、それからジョニー・ホーンズ、それからお嬢ちゃん、君のお母さんだ」

「それじゃお母さんも死んだのね」少女はエプロンドレスに顔を落として激しく泣きながら叫んだ。

「そうだ。お嬢ちゃんと私以外は全部だ。それから、この方向に水が見つかるチャンスがあると思って、お嬢ちゃんを肩に担いで一緒に歩いてきた。しかし事態はよくならなかったようだ。もう、完全に望みは絶たれた」

「私達も死ぬってこと?」少女が泣くのをやめ、涙に濡れた顔を上げて尋ねた。

「そういうことになりそうだ」

「なぜもっと早く言わなかったの?」少女は愉快そうに笑いながら言った。「私をこんなに怖がらせて。もちろん私達もこれから死ぬのなら、またお母さんに会えるでしょう」

「そうだ。会えるよ。お嬢ちゃん」

「おじさんにもね。お母さんにおじさんが本当に親切にしてくれたと思うわ。大きな水差しと、ボブと私が大好きなように両側を焼いた、熱々のそば粉のパンをたくさんもってね。あと、どれくらいかかるの?」

「分からないな・・・・そんなに長くない」男の目は北方の水平線をじっと見ていた。青い天空に三つのちいさな染みが現れていた。それは非常に早く接近していたので、一瞬ごとに大きくなっていた。染みは急速に三羽の大きな褐色の鳥の姿となった。それは2人の放浪者の頭上を輪を描いて周り、その後彼らを監視できる岩の上に止まった。西部のハゲワシ、ヒメコンドルだった。彼らの出現は死の前触れだった。

「ニワトリが来たわ」凶鳥を差しながら、少女は愉快そうに叫んだ。そして手を叩いて鳥を飛び立たせた。「ねえ、この場所は神様が作ったの?」

「もちろんそうだ」男はこの予想しない質問にちょっと驚いて言った。

「イリノイもミズーリも神様が作ったんでしょ」少女は続けた。「この辺は誰か他の人が作ったと思うわ。あまり上手く出来ていないから。水と木を作りわすれているわ」

「どんなお祈りを捧げようか?」男はおずおずと尋ねた。

「まだ夜じゃないわよ」少女は答えた。

「鎌わんさ。そんなに規則的じゃなくても、神様は気にしないよ。約束する。草原にいた頃に毎晩、幌馬車で言っていた祈りを唱えなさい」

「どうして自分で言わないの?」少女は不思議そうな目で尋ねた。

「思い出せないんだ」彼は答えた。「私はこの銃の半分くらいだった頃から言ったことがない。しかし遅すぎるということはないだろうな。お祈りを言ってごらん。私は側にたって一緒に言おう」

「それならひざまずかないと。私もね」少女はそのためにショールを地面に敷いて言った。「両手をこんな風に上げて。心が穏やかになるわ」

ヒメコンドル以外に見るものがあれば、それは奇妙な光景だったろう。ちいさなショールに、2人の放浪者が、-ちいさなよくしゃべる子供と向こう見ずで頑固な冒険家が-、並んでひざまづいていた。少女の丸々とした顔と、男の疲れてやせこけた顔は、両方とも雲一つない空を見上げ、心からの懇願を畏敬する神と向かい合い、二つの声が、-一つは細く透明感があり、もう一つは低くしわがれた、-合わさって慈悲と許しを請っていた。祈りを終わり、彼は巨石の角にもう一度腰をおろした。しかし、この大自然は彼にとって激しすぎるとわかった。三日三晩、男は休んでいなかった。疲れた目にゆっくりと瞼がたれてきて、男の頭はどんどんとうなだれ、ごま塩髭が少女の金髪と合わさった。そして2人は、同じように深く夢のないまどろみへと落ちていった。

この放浪者があと30分起きていたら、奇妙な光景が目に入っただろう。アルカリの大地の極限の端の彼方に、ちいさな土埃が巻き上がっていた。最初はごくわずかで、遠くのもやとほとんど区別がつかなかった。しかしジョジョに高く広く、しっかりとして輪郭が明瞭な雲となるまでに成長した。この雲はどんどんと大きさを増していき、動いている生物の大群からわき起こったものに違いないことがはっきりしてきた。もっとひような地であれば、これを見るものは草食を好むバイソンの大群が近づきつつあるという結論に達しただろう。この乾ききった荒野では、明らかにそんなことはありえなかった。粉塵の渦が、2人の放浪者が休んでいるこの人里離れた断崖に近づくにつれ、キャンバス地の幌馬車と、武装した御者の姿がもやの中から現れ始めた。そして突然現れたものは、西部に向かう巨大なキャラバン隊だと分かった。しかしなんというキャラバン隊だ!その先頭が山のふもとに到着したとき、最後尾はまだ水平線に姿を現していなかった。巨大な平原を越えて伸びるのは、どこまでも連なる、四輪馬車、二輪馬車、馬にまたがった男達、徒歩の男達の並びだ。数え切れないほどの女性が荷物を背によろよろ歩き、そして子供は荷馬車の横をよちよち歩くか白い幌の下から顔を覗かせた。これは明らかに普通の移住者の一団ではなかった。むしろ環境の圧力からやむを得ず、新天地を探している放浪の民だった。車輪のきしみや馬のいななきと共に、非常に多くの人間から出る、混乱したガタガタ、ゴトゴト言う音が、澄んだ大気に響き渡った。いかにこの音がうるさくても、彼らの頭上にいる疲れた放浪者を目覚めさせるには十分ではなかった。

隊列の先頭には、厳しい、意志がかたそうな顔をして馬に乗った男が、十人以上いた。彼らは、黒っぽい手織りの服をまとい、ライフルで武装していた。断崖の麓に来ると彼らは立ち止まり、簡単な会議を行った。

「右に行くと井戸がある、兄弟」一人が言った。白髪交じりの髪で、綺麗に髭を剃り、口をしっかりと結んだ男だった。

「ブランコ山脈の右に行けば、・・・リオ・グランデにつくだろう」別の男が言った。

「水の心配はない」三番目の男が言った。「岩から水を引き出すことができた神が、自ら選んだ民をここで見捨てようか」

「アーメン!アーメン!」全員が応えた。

彼らが旅を続けようとしたとき、一番若く鋭い目をした男が驚きの叫びを上げ、頭上のごつごつした岩山を指差した。その頂きに、後ろの灰色の岩を背にしてくっきりと明るく、ピンク色の小さいものがはためいていた。これを見て、一人の戦闘員が馬の手綱を引き、銃を手にした。先導者を支援するため、馬に乗った男達が新に駆け寄った。「インディアンだ」という言葉が皆の口に上がった。

「ここにはインディアンは一人もいないはずだ。」指揮をとっているらしい老人が言った。「ポニー族の土地を過ぎた。山脈を越えるまでは他の種族はいないが」

「行ってみてこようか。スタンガーソン兄弟?」隊列の一人が尋ねた。

「俺も」「俺も」たくさんの声がした。

「馬は下に置いていけ。 我々はここで待つ」老人は応えた。その瞬間、若い男達は馬を下り、手綱を縛って、切り立った斜面を彼らの興味を引いた物体に向かって登っていた。彼らは熟練の偵察隊の自信と器用さで素早く静かに進んだ。下の平原から見上げると、彼らは岩から岩に身軽に飛び移り、遂には身体の線が空を背景に突き出て見えた。最初に警告を発した青年が先頭に立っていた。それを追いかけていた男たちは、この青年が驚きをこらえきれないように、突然手を上げるのを目にした。追いついてその光景を見た瞬間,彼らも同じような感慨にとらわれた。

不毛な丘に囲まれたちいさな高台に、巨大な丸石があり、この巨石にもたれて、背の高い男が横たわっていた。髭は長く厳しい顔つきだったが極端にやせ細っていた。穏やかな顔で規則的な呼吸をしていたので、彼はぐっすり眠っているとわかった。男の横に子供が寝ていた。子供は、男の茶色い筋張った首に白い丸々とした手を回し、金髭の頭を男のベルベットの上着の胸に寝かせていた。少女の薔薇のような唇は開かれており、雪のように白い綺麗な歯並びを覗かせて、子供っぽい顔に陽気な笑みが拡がっていた。少女の肉付きの良いちいさな足の先には、白い靴下と留め金がピカピカの綺麗な靴が履かされていて、男の長い皺だらけの足とは、おかしなほど対象的だった。この奇妙な二人連れの頭上の岩だなには、厳粛な面持ちのヒメコンドルがとまっていたが、人がやってくるのを見て、騒々しい失望の叫びを発して、不機嫌そうに羽ばたいていった。

汚い鳥の叫びで、眠っていた二人は目を覚ました。二人は彼らを当惑して見つめた。男はよろよろと立ち上がり、平原を見下ろした。

そこは彼が睡魔に襲われたときには荒涼としていたが、今やものすごい数の人や動物の群れが横断していた。それを見て彼の顔に信じられないという表情が浮かんだ。そして彼は骨ばった手で目を擦った。「多分、これが幻覚というやつか」彼はつぶやいた。子供は彼の側にたち、コートの裾にしがみついた。何も言わなかったが、子供っぽい不思議そうな、問いただすような視線であたりを見回した。

救助隊は、二人の放浪者に、すぐにこの出現は幻覚ではないと分からせることができた。彼らの一人が、少女を捕まえて肩の上に乗せた。他の二人がやせ衰えた同行者を支え、幌馬車の方に行くのを手助けした。

「私の名はジョン・フェリアーだ」放浪者は説明した。「私とあの子供が21人の生き残りだ。他は全員、餓えと乾きで死んだ」

「あれはお前の子供か?」誰かが尋ねた。

「もう、そう呼んでいい」男が挑戦的に叫んだ。「あの子は私が助けた、私の子だ。誰も私から引き離すことはできない。あの子は今日からルーシー・フェリアーだ。しかし、あなた方は誰です?」彼は日に焼けた男達を興味深げに見回して続けた。「ものすごい数のようですが」

「ほぼ一〇〇〇〇人はいる」青年の一人が言った。「我々は天使モローニが選びたもうた迫害された神の子だ。」

「その名前は聞いたことがありませんが」放浪者が言った。「しかしえらくたくさん選んだみたいですな」

「神聖なものを茶かしてはいけません。」別の一人が厳粛に言った。「我々は、金箔の板にエジプト文字で書かれ、パルミラの聖なるジョセフ・スミスに手渡された聖典を信じるものです。我々はイリノイ州の、ノーブーから来ました、我々はそこに教会を築いていました。我々は暴力的な男や不信な者から、逃げ場を求めてきました。それが砂漠の中心でも構いません」

ノーブーの名前で、ジョン・フェリアーの記憶が呼び覚まされたようだった。「分かりました」彼は言った。「あなた方はモルモン教徒ですね」

「我々はモルモン教徒だ」彼の同行者はいっせいに応えた。

「それでどちらに行こうとしているのですか?」

「それは知らない。神の手が、預言者の元で我々を導いている。あなたは預言者の前に行かなければならない。あなたをどうするか、預言者が判断なさるでしょう」

彼らはこの時までに丘の麓に到着し、移住者の群れに取り囲まれた、・・・顔色の悪い、おとなしい風貌の女、頑丈な、楽しそうな子供、不安そうな、熱心な目の男。彼らは放浪者の一人の若さと、もう一人の衰えを見て、多くが驚き、同情の叫びを上げた。しかし、同行者は立ち止まらず、それを押しのけ、後ろから大勢ののモルモン教徒を引き連れて、一つの荷馬車にやってきた。それは大きさ、派手な見栄え、小綺麗さでひときわ目立っていた。六頭の馬がその馬車を引いていた。他の馬車は、一台あたり二頭か、せいぜい四頭だった。御者の隣に、三十歳にはなっていないであろう男が座っていた。しかし彼の量感あり頭部ある頭部と意志の固そうな表情は彼がリーダーであることを示していた。彼は茶色い背表紙の本を読んでいた。しかし群衆が近づくと、彼はそれを脇におき、注意深く状況説明に耳を傾けた。それから彼は二人の放浪者の方に向き直った。

「我々がお前たちを一緒に連れて行くのは」彼は厳粛な言葉で語った。「我々の教義を信じる場合のみだ。我々の中に狼は入れない。お前がちいさな腐敗になると分かるなら、お前たちの骨をこの荒野にさらしたほうがずっとましだ。ちいさな腐敗はやがて果物全体を腐敗される。この条件で一緒に来るか?」

「どんな条件でも一緒に行きます」フェリアーは言った。大げさな言い方に、厳しい長老たちも笑顔を見せた。リーダーだけは、厳しい印象的な表情を崩さなかった。

「連れて行け、スタンガーソン兄弟」彼は言った。「食べ物と水を与えてやれ。子供も同じように。彼に我らの神聖な教義を教えるのも、お前の仕事とせよ。すでにだいぶ遅れた。前進だ。シオンに向かって!」

「シオンに向かって!」モルモン教の群衆は叫んだ。その言葉は長い隊列をさざなみのように進み、口から口に伝えられ、とおい彼方で鈍いつぶやきとなり、消えていった。鞭を打つ音と車輪のきしみで、大きな幌馬車が動きだし、すぐに隊列全体がもう一度くねくねと進み出した。二人の世話を任された老人は、彼らを自分の幌馬車に連れていった。そこでは既に食事が用意されていた。

「ここにいなさい」彼は言った。「数日もたてば、疲れから回復するでしょう。その間に、これからずっとあなたはわれわれと同じ信仰を持つということをわすれないように。ブリガム・ヤングがそう語り、彼はジョセフ・スミスの声で語った。それは神の声だ。」

第2章

ユタの花

この一節は、モルモン教の移住者たちが最後の安住の地にたどり着くまでに堪え忍んだ試練と窮乏を称える場所ではない。しかし、ミシシッピーの川辺からロッキー山脈の西側まで、彼らはほとんど歴史に並ぶもののない不屈さで邁進した。

凶暴な人間、凶暴な獣、餓え、乾き、疲労、疾病、-自然が進路に置きうるあらゆる障害が-、アングロ・サクソンの粘りによって全て克服された。もちろん長い道程と、何度も繰り返された恐怖の体験には、信者の中のもっとも屈強な男でさえ動揺した。彼らが太陽を浴びるユタの広い谷間を眼下に眺め、リーダーの口からここが約束の地であり、この処女地が永遠に彼らのものになると知らされたとき、心からの祈りにひざまずかない者は、誰1人いなかった。

ヤングはすぐに毅然とした首長であると同時に有能な行政官であることを証明した。地図が描かれ見取り図が準備され、そこに未来の都市が描かれた。農地はすべて各々の立場による割合に応じて割り当てられ、商人は商売につき、職人は自分の転職についた。街では魔法のように道と街区が出現した。農村では、排水路と生け垣、植樹と開拓によって、次の夏が来るまでに、小麦の実りで農地全体が金色になった。この奇妙な入植地では、何もかもが繁栄を極めた。とりわけ、都市の真中に建てられた巨大な教会は、どんどんと高くなっていった。夜明けに最初の日の光が差してから、たそがれの光が消えるまで、ハンマーのカンカンいう音と、鋸のギーギーいう音は一瞬たりとも途絶えなかった。それは多くの苦難を通り抜けて信者を導く神のため、入植者が建てたものだ。

ジョン・フェリアー、そして彼と運命を分かち合って、養女となった少女は、2人とも、彼らの長い巡礼に最後まで同行した。ルーシー・フェリアーは道中ずっとスタンガーソン長老の幌馬車の中で快適な旅をした。彼女はモルモン教徒の3人の妻と息子、-わがままで出しゃばりの十二歳の少年だった-、と一緒に暮らした。子供の適応力によって、母の死によるショックから元気を取り戻すと、少女はすぐに女性達のお気に入りとなり、少女自身も移動する幌屋ねの家の新しい暮らしになじんでいった。その間、フェリアーは体力を回復し、役に立つガイド、不屈の狩猟家として有名になった。彼は急速に新しい仲間達の尊敬を勝ち取り、一行が旅の目的地に着く頃には、他の移住者の誰より、彼に広い肥えた土地の区域を与えることに反対する者はいなかった。もちろんヤング自身に加え、スタンガーソン、ケンボール、ジョンソン、ドレバー、の四長老は別格だった。

このようにして獲得した農地に、ジョン・フェリアーはみずから頑丈なログハウスを建てた。その年以降も何度となく増築を繰り返し、広々とした邸宅にまで拡張した。彼は実務家の精神を持っており、取引は賢く手先は器用だった。頑丈な体質のおかげで彼は朝から晩まで働くことができたので、農地を耕して改良した。こういう生活が続いた結果、彼の農地や所有物は非常に立派となった。三年で彼は周りより豊かとなり、六年で満足な生活ができ、九年で彼は裕福となり、そして十二年たつと、ソルトレークシティ全体で彼に並ぶ者は6人もいないほどになった。大きな内陸の湖から遠く離れたウォサッチ山脈まで、ジョン・フェリアー以上に名の知れた人物はいなくなった。

ただ一つ、彼は仲間の信者の影響に逆らっていた点があった。どんな意見や説得もかかわらず、彼は仲間のやり方に合わせて妻をとらなかった。彼のこのしつこい拒絶の理由を決して語らなかった。しかし、この決意に執着することに満足を覚えていた。改宗した信仰の不徹底さを理由に、彼を糾弾するももいた。また別の者は、それを富への貪欲さと出費を惜しむことに帰した。またさらに別の者は、彼が若い頃大西洋沿いの地でやつれて死んだ金髪女性との恋愛を語った。理由がなんであろうと、フェリアーは頑固に独身を通した。それ以外の点では、彼は新しい入植した信仰にに従う、正統的でまじめな男という評判を得ていた。

ルーシー・フェリアーはこのログハウスで成長した。そして養父のすることは何でも手伝った。山脈の身を切るような空気や、松の木の芳香が、乳母や母親代わりとなった。年が過ぎるにつれ、彼女の背は高く、体格はよくなった。頬はいっそう赤く、足取りはいっそう柔軟になった。フェリアーの農場の脇を通る幹線道路を歩いていて、彼女のしなやかな女性らしい姿が踊るように小麦畑をよぎるのを見たり、彼女が父の馬にまたがり、西部生まれの優雅さで軽々とそれを操るのに出会うと、長くわすれていた思いが心に蘇るのを感じる人間が多かった。このようにつぼみは花へと開花した。父親が最も裕福な農夫となるために費やした年月は、少女をロッキー山脈の太平洋側全体で見つけうる、最も見事なアメリカ女性の見本へと成長させていた。

しかし少女が女性へと成長していたことを最初に気付いたのは父ではなかった。そんなことはまず起きない。神秘的な変化は、一日単位で計るには微妙で小さすぎた。誰よりも女性自身がそれを知らない。声の響き、ふれ合った手が心を振るわせ、そして自尊心と恐怖の入り交じった気持ちで、やっと新しくそれまでより大きな何かが自分の中で目覚めたことに気付くのだ。その日を思い出せない者はほとんどいない。そして新しい人生の夜明けを告げるちいさな出来事を覚えていない者もまずいない。ルーシー・フェリアーの場合、その出来事はそれ自体で十分に深刻だった。彼女自身、そして多く人間の運命がその出来事によってどう変わって行くのかを別にしてもである。

六月の暖かい朝のことだった。末日聖徒達は、紋章に刻まれた巣に住む蜂のように忙しかった。勤勉な人間たちが奏でるにぎやかな音が、野にも、通りにも、満ちあふれていた。ほこりっぽい主要道路を通る、荷物をいっぱい積んだロバの長い隊列は、例外なく西部を目指していた。カリフォルニアで金鉱への熱狂が起き、選ばれし民の街を通って大陸横断ルートが敷説されたためである。辺境の牧草地からやってきた羊や子牛の群れや、果てしない旅に人馬共に疲れ切った入植隊も、次々にその道を通った。こういう雑多な集団の間を、熟練の技を持った騎手を背にした一頭の馬が縫うように進んでいた。馬を駆け足で走らせていたのはルーシー・フェリアーだった。美しい顔は運動で火照り、栗色のの長い髪は後ろになびいていた。彼女は父から街での仕事を依頼されていた。そして頼まれた仕事をきちんと終わらせたい一心で、それまで何度となくこなしてきた使いと同じように、まったく恐れを知らない若さで馬を飛ばしていた。旅に汚れた冒険者達は、驚いて彼女を見送った。毛皮の服を着て旅をする、表情を表に出さないインディアンでさえ、この色白の女性の美しさに驚嘆し、普段の平静さを崩した。

彼女は街の外れにまで到着していた。その時彼女は、荒っぽい風体の牧夫が6人ばかりで引き連れている大きな牛の群れが道をふさいでいるのに気付いた。いらだった彼女は、隙間が空いたように見えた場所に馬を進めてこの障害物を通り抜けようとした。しかしほとんど進めないうちに、後ろからも牛が近づいてきて、荒々しい目をした角の長い牡牛の流れの中に完全に取り囲まれてしまった。彼女は牛を扱うのになれていたので、こんな状況になっても助けを呼ばず、色々なチャンスを巧みに活用して、馬を前に進め、行列を通り抜けようとした。偶然か故意かわからないが、不幸にも一頭の牛の角が馬の脇腹を激しくつき、馬は正気を失った。その瞬間、馬は怒りの鼻息荒く、後ろ足で立ち上がって飛び跳ねた。熟練の乗り手でなかったら投げ出されていたに違いない。絶体絶命の状況だった。興奮した馬がつっこむたびに、また角にぶつかり、余計に混乱することになった。女性にできたことはただ、鞍につかまっていることだけだった。もし滑り落ちれば、恐れおののいて制御不能になった動物の蹄に踏まれる恐ろしい死が待っていた。突然の非常事態になれていなかったので、彼女は頭がくらくらし、手綱を握る手が緩んだ。舞い上がる砂埃と、もがく馬の熱気で息ができなくなってきた。もし、すぐ隣から優しい声が聞こえて、助けがきたことに気付いていなければ、彼女は絶望して奮闘するのを諦めていたかもしれなかった。その声と同時に、筋張った褐色の手が恐れおののく馬のくつわをつかみ、群れのなかを無理矢理に進ませて、まもなく牛の姿がまばらになるところまで彼女連れていった。

「怪我がなければいいが、お嬢さん」救助人は礼儀正しく言った。

彼女のその男の黒い精巧な顔を見上げ、元気よく笑った。「本当に怖かったわ」彼女は無邪気に言った。「ポンチョが牛の群れを怖がるなんて、誰が想像したでしょう?」

「鞍から落ちなくて、助かったな」男が真剣に言った。彼は背の高い粗野な感じの青年で、力強い葦毛の馬にまたがり、荒っぽい狩人の服に身を包み、長いライフル銃を背負っていた。「ジョン・フェリアーの娘さんと見たが」彼は言った。「その馬はお父さんの馬だろう。お父さんに会ったら、セントルイスのジェファーソン・ホープ一家を覚えているか聞いてみてくれ。もし俺の思っているフェリアーさんなら、俺の父と君のお父さんはすごく親しかったはずだ」

「うちに来て自分で聞いた方がよくない?」彼女は遠慮がちに尋ねた。

青年はこの提案が嬉しかったようで、黒い目が喜びに輝いた。「そうしよう」彼は言った。「山に二ヶ月も入っていたので、とても尋ねていける状態じゃない。ありのままの俺を見てもらうしかないな」

「お父さんはうんと感謝するわ。私もだけど」彼女は答えた。「お父さんはとても私を愛しているの。もしあの牛たちに踏みつけられていたら、きっと立ち直れなかったでしょう」

「俺もだ」男が言った。

「あなたが!どちらにしてもあなたにはたいした問題じゃないと思うけど。あなたは私達の知り合いでもないし」

この返答を聞いて、日に焼けた非常にしょげた顔をしたので、ルーシー・フェリアーは大声で笑い出した。

「冗談よ」彼女は言った。「あなたはもう友達よ。ぜひ来てね。さあ急がなきゃ。お父さんが私を信用して仕事に使ってくれなくなるわ。さようなら」

「さようなら」彼はソンブレロを掲げて、彼女のちいさな手にかがみ込んで答えた。彼女は馬を回して鞭をくれ、もうもうと砂埃を舞上げて広い道を駆け出していった。

ジェファーソン・ホープは、陰気で無口な仲間達と馬を走らせていた。彼らは銀を求めてネバダ山脈に分け入っていた。そして発見した鉱脈を掘る資金を集めようとしてソルトレイクシティに戻るところだった。彼は、この突然の事件によって考えが別の方向を向くまで、誰よりも鉱山の仕事に熱中していた。山の風のように率直で健康そうな美しい女性を目にして、彼はこれまで気付かなかった心の奥底まで激しく感情を乱された。彼女が視界から消えたとき、彼は重大な人生の転換点が訪れたことに気付いた。銀に対する投機も、それ以外のどんな問題も、今訪れたこの大事件に比べれば、それほど重要ではなくなった。彼の心に突然生まれた愛は、少年にありがちな突然の気まぐれではなく、強い決意と自尊心を持った男の、激しく荒々しい衝動だった。彼は、手がけた事は全部成功するのに慣れていた。彼は心の中で誓った。もし努力と忍耐で成功が得られるなら、絶対にそうしてみせると。

彼はその夜ジョン・フェリアーを訪ねた。そしてそれから何度となく訪問するうちに、彼は家の一員のように親しくなった。ジョンはこの谷にとじこもって仕事に没頭しており、この12年間外の世界の出来事を知るチャンスはほとんどなかった。ジャファーソン・ホープは何でも知っており、ルーシーと同様父も彼に興味を惹かれた。彼はカリフォルニアの開拓者で、荒っぽい古き良き時代に、山を当てたり、夜逃げもしたりするおかしな話をいくらでもすることができた。彼は偵察兵もしていた。漁師も、銀の山師も、そして農場経営もやったことがあった。どんな場所でも、心をかき立てるような冒険があれば、ジェファーソン・ホープはそれを探しに行った。老夫婦は彼をすぐに気に入り、その勇気を褒め称えた。こういう時、ルーシーは口を挟まなかった。ただ赤らんだ頬と輝く幸せそうな目によって、彼女の若い心はもう1人だけのものではないことをはっきり伝えるだけだった。実直な父はこういう兆しを見落としたのかもしれない。しかし彼女の関心を勝ち取った男が、それを見逃すはずはなかった。

ある夏の夕暮れ、彼は馬を全速力でやってきて、門のところで止まった。戸口にいたルーシーは彼に会いに出て来た。彼は手綱を柵の向こうに投げ、大股で小道をあがってきた。

「俺はいく、ルーシー」彼は両手を握って言った。そして優しく顔をのぞき込んだ。「今一緒に来てくれとは頼まない。しかしもう一度戻ってきたときに来れるように準備しておいてくれるかい?」

「それはいつのことなの?」彼女は顔を赤くして笑いながら尋ねた。

「二ヶ月街を離れる。それから戻ってきて君を連れて行く。俺たち二人を邪魔するものは誰もいない」

「お父さんはどうなるの?」彼女は尋ねた。

「この鉱山の仕事が上手くいくという条件で、おとうさんは同意してくれた。俺はそのことは心配していない。」

「そうなの。もちろん、お父さんとあなたが納得していれば、もう何も言うことはないわ」彼女は彼の広い胸に頬を寄せ、ちいさな声でつぶやいた。

「ありがとう!」彼はかすれた。声で言うと、覆い被さってキスした。「ではこれで決まった。ここに長くいればいるほど、いくのが辛くなる。谷で仲間が待っている。さようなら。最愛の人よ、-さようなら。二ヶ月会ったらまた会える」

話しながら彼は身体を離して、馬にひらりとまたがり、あたりを見回すこともなく猛烈に馬を駆って去って行った。あたかも、後にした場所をほんの少しでも振り返れば、決意が鈍ると恐れているようだった。彼女は門のところにたったまま、彼が視界から消えるまでじっと見送っていた。彼女はそのあと家の中に戻った。ユタで一番幸せな女だった。

ジェファーソン・ホープと彼の仲間がソルトレイクシティを出発してから三週間が過ぎた。あの青年が帰ってきて娘を奪われる日が迫ってくると考えるとジョン・フェリアーの心は痛んだ。しかし娘の明るく幸せそうな顔は、どんな説得にも増して強力で、諦めるほかなかった。彼はずっと心の奥深くで、誰に何を言われても、決して娘とモルモン教徒の結婚を許さないと、堅く決意していた。彼は、そんな結婚は全く結婚とみなしていなかった。それは恥と不名誉以外の何者でもない。彼がそれ以外のモルモン教の教義についてどう考えていたにしても、この一点に関しては譲らなかった。しかしこれを口外することはできなかった。近年では、この聖者の地で非正統的な意見を語るのは危険なことだった。

そう、危険なことだ、・・・・・あまりにも危険だったので、最も高徳な人間でも、宗教上

の意見を表明すれば、その言葉が誤解されて迅速な懲罰を受けかねなかったので、声を潜めてささやくのが精一杯だった。迫害の被害者だった教徒たちは、今や自分たちの基準で迫害する立場へと変わった。それも、最も恐ろしい種類の迫害になったのである。セビリアの宗教裁判所でも、ドイツのフェーメ裁判所でも、イタリアの秘密結社でも、ユタ州を覆う暗雲以上に恐ろしい組織を機能させることはできなかった。

この組織が恐ろしいのは、不可視性と神秘性を伴っていたことだ。それはまるで全知全能のように思えるのに、目にも触れず、耳にも聞こえなかった。教会にたてつく男は消えた。そして彼がそこを立ち去ったのか、あるいは何かが起こったのか、誰も知るものはいない。妻と子供達は彼を家で待っていた。しかしこの秘密裁判の手によって、どのような対価を支払わされたか、戻ってきて語る父はいなかった。短期な言葉や性急な行為には、続いて破滅が訪れた。しかし彼らの上に垂れ込めている、この恐るべき権力の正体がどんなものか、誰も知らなかった。人々が恐れ、震えあがってこの噂がぱたっと広まり、たとえ荒野の真中であっても、迫害組織に対する疑念をあえて口にしなかったのも無理のないことだった。

当初、このぼんやりとした恐るべき力は、ただ、モルモンの信仰を奉じた後、それを捨てたり別の道に行こうとする、反抗的な人間にのみ向けられた。しかしすぐに範囲が拡大した。成人女性の供給が不足し始めていた。頼りとする女性の人口が得られない一夫多妻は、実際は不毛の教義だった。奇妙な噂が流れ始めた・・・・これまでインディアンが目撃されたことがない場所で、入植者が殺されたり野営地が銃撃された・・・長老たちのハーレムに新しい女が現れた・・・・無きやつれた女性たちの顔には拭いきれない恐怖の痕跡が残っていた・・・・。山岳地帯で日が暮れた旅人は、武装してマスクをかぶり、こそこそと音もなく、闇の中を素早く通り過ぎた一団のことを語った。こういう噂は、単なる噂ではなく、実態と形を持っていることが何度も何度も裏付けられ、やがて具体的な名前を獲得した。この当時、人里離れた西部の牧場で、その邪悪で不吉なものは、ダナイト団、または、復讐の天使達、と名付けられていた。

これほど恐ろしい結果をもたらすと噂される組織の伝聞が増えることは、人の心に生まれる恐怖を減らすよりも増やす働きをした。この非常な集団に誰が属しているのか、知る人はいなかった。信仰の名のもとに殺人や暴力を行う構成員の名前は、堅く秘密にされていた。予言者や彼の使命に関して、非常に親しい友人に不信を漏らしたら、そのうちの一人がたいまつと剣を持って猛烈な償いをもとめるため、そその夜出現するかもしれなかった。全ての人間が隣人を恐れたので、誰も心の奥底の秘密を語るものはいなかった。

ある晴れた朝、ジョン・フェリアーは小麦畑に出かけようとしていた。その時掛けがねが鳴る音が聞こえた。窓越しに覗くと、がっしりとした。砂色の髪の中年男性が底の道を歩いてくるのが見えた。フェリアーの心臓は口まで飛び上がった。それが誰であろう、ブリガム・ヤングその人だったからだ。恐れおののいて、-このような訪問が彼にとって良いことはほとんどありえなかった。-フェリアーは戸口に走っていき、モルモン教の指導者を出迎えた。しかし彼は、この挨拶をよそよそしく受け止め、厳しい顔でフェリアーの後に続いて居間に入った。

「フェリアー兄弟」彼は座りながら言った。そして淡い色のまつげの下から鋭く農夫を睨みつけた。「真の信者はよき友であった。我々はお前が砂漠で飢えているときに拾い上げた。我々は食物をお前と分かち合った。我々はお前を完全に選ばれし谷につれていった。我々はおまえに気前よく土地を与え、我々の庇護の元で豊かになるのを許した。違うか?」

「その通りです」ジョン・フェリアーは答えた。

「これら全ての見返りに、我々が要求した条件はたった一つだ。それはお前が正しい信仰を持つことだ。そして全ての面で教義に従うことだ。おまえはそうすると約束した。そしてこれを、-もし巷で言われていることが本当なら-、お前は無視している」

「どのように私が無視しているでしょう?」フェリアーはなだめるように両手を挙げて尋ねた。「共有資金に支出しませんでしたか?寺院に参列しませんでしたか?私は・・・・・?」

「お前の妻達はどこだ?」ヤングは彼の周りを見回して尋ねた。「妻達を呼べ。私が挨拶しよう」

「私が結婚していないのは本当です」フェリアーは答えた。「しかし女性はほとんどおりません。私以上に妻が必要な人間が大勢います。私は1人っきりではありません。私の困っているところを面倒見てくれる娘がいます」

「私がお前に言いたいのはその娘のことだ」モルモン教の指導者は言った。「お前の娘はユタの花となるまで成長した。この地の沢山の高徳者の目にも好ましく映っている」

ジョン・フェリアーは心の中でうめいた。

「信じたくないが、お前の娘に関してこんな話がある、-彼女が誰か異教徒と約束を交わしたという話しだ。これは暇人の噂に違いない。聖ジョセフ・スミスの第十三の噂はなんだ?『真の信仰を持つ全ての女性を選ばれし者の1人と結婚させよ。もし異教徒と結婚すれば、重罪を犯すことになる』この掟がある以上、聖なる信条を信棒するお前が、自分の娘にそれを違犯させておくことは不可能だ」

ジョン・フェリアーは何も言わず、神経質に乗馬鞭をいじっていた。

「この一点で、お前の信仰自体が試されているであろう、-そう聖4人会議で決められた。我々は彼女に年寄りを与えはしない。選択権を一切奪うこともしない。我々長老は多くの雌牛を持っているが、しかし子供たちにも与えねばならない。スタンガーソンは息子が1人いる。そしてドレバーにも息子が1人いる。両方とも喜んでお前の娘を受け入れるだろう。どちらかを選ばせなさい。彼らは若くて豊かだ。そして本当の信仰心がある。これに関してお前の意見はどうだ?」

フェリアーの眉間に皺を寄せて少しの間黙ったままだった。

「時間を頂けますか」彼は遂に言った。「娘はとても若い、-まだ結婚できるような年齢ではありません」

「選ぶのに一ヶ月与えよう」ヤングは椅子から立ち上がりながら言った。「その期間が過ぎたら返事をするのだ」

彼は扉を通りすぎようとした時、真っ赤な顔にぎらぎらした目で振り返った。「四聖者の命令に対して弱腰になるくらいなら、ジョン・フェリアー」彼は怒鳴った。「お前と娘は今、シエラ・ブランコで白骨を晒していた方がよかったのだ」

手で脅かすような仕草をして、彼は扉に背を向けた。そしてフェリアーの耳に、小石の多い道をざくざくという重い足音が聞こえた。

彼をこのことをどうやって娘に切り出したものかと思案しながら、まだ膝に肘をついたまま座っていた。その時、彼の手に柔らかい手が置かれた。見上げると、娘が側にたっていた。娘の青ざめて恐れおののいた顔を一目見て、フェリアーは、娘がさっき交わされた会話を聞いていたことがわかった。

「怖がらなくていい」彼は娘を引きよせ、なだめるように栗色の髪をなでながら答えた。「なんとかしていい手段を見つける。あの男に対する愛情が薄れたということはないだろうな?」

すすり泣きと彼の手を堅く握りしめたのが唯一の返事だった。

「違うよな。もちろんそんなはずはない。そんなこと聞きたくもない。あいつは見込みのある男だ。そしてクリスチャンだ。彼はここの連中より上のはずだ。どんな祈りや説教をしていてもだ。明日ネバダに出発する一団がある。私は何とかしてこの苦境を知らせる手紙を彼に送る。もし私のメガネにかなう男なら、電報のように目にもとまらぬ早さで戻ってくるさ」

ルーシーは涙を流しながらも、父の説明に声を出して笑った。

「彼が来たら、私たちにとって一番良い方法を提案してくれるでしょう。でも私が恐れているのはお父さんのことなの。聞いたことがあるの、・・・・予言者に逆らった人たちの恐ろしい話を。何か恐ろしいことが必ず起きると」

「まだ私たちは逆らっていない」父は答えた。「そうするまでに、危険に備える時間がある。丸一ヶ月ある。それが過ぎれば、私とお前はユタを去るのが一番だと思う」

「ユタを捨てるの!」

「まあそういうことだ」

「でも農場は?」

「できる限り金に替える。残りはおいていく。実はな、ルーシー、そうしようと思ったのはこれが初めてではない。私は、ここの連中がふざけた予言者にするように、誰の足下にもひざまずきたいと思わない。私は自由なアメリカ人だ。ここの全てになじめない。私は生き方を変えるには年をとりすぎているんだろう。もし彼がこの農場をウロウロしたら、もしかしたら正面から来る散弾と出くわすかもしれないな」

「しかし私達を黙って出て行かせないわ」娘は反対した。

「ジェファーソンが来るのを待つんだ。そうすれば、すぐになんとかなる。娘よ、それまでの間、身をやすではない。そして涙にくれるではない。そうでないと彼がお前と会ったとき、私が怒られる。怖がることは何もない。危険は全くないんだ」

ジョン・フェリアーは確信に満ちた口調で娘をこう慰めた。しかしその夜、娘は父が何時になく慎重に扉をしっかりと閉め、寝室の壁に掛けておいたさびた散弾銃を丁寧に掃除し、弾を込めるのを見ずにはいられなかった。

モルモン教予言者と話をした次の朝、ジョン・フェリアーはソルトレイクシティに出かけた。そしてネバダ山脈に向かう知り合いを見つけ、ジェファーソン・ホープへの手紙を預けた。その中で彼は青年に、いかに差し迫った危険に直面しているか、そして戻ってきてくれることがどれほど重要かを、書き記した。これをやり終えて、彼は少し肩の荷を降ろした思いがした。そしてやや気持ちが晴れて、家に戻った。

農場に戻り、彼は門柱の両側に馬がつながれているのを見て驚いた。部屋に入ってそれ以上に驚いたのは、2人の男が居間を占拠していたことだ。長く青白い顔の1人は、ロッキングチェアにふんぞり返って、ストーブの上に足をつきあげていた。がさつで自惚れた顔の首の太いもう1人は、ポケットに手を入れて流行の曲を口笛で吹きながら窓の前に立っていた。2人はフェリアーが入ると会釈した。そしてロッキングチェアにいた男が話を始めた。

「私達のことはご存じないでしょうね」彼は言った。「こちらはドレバー長老の息子で、私は、神が手をさしのべてあなたを真の信仰に引き入れた時、あなたと一緒に砂漠を旅した、ジョセフ・スタンガーソンです。」

「神があらゆる民に、御心にかなった時期になさるが如く」もう1人が鼻にかかった声で言った。

「神はゆっくりと粉を引くが非常に細かい」

ジョン・フェリアーはそっけなくお辞儀をした。彼は誰がやってきたのか、予想がついていた。

「私たちが来たのは」スタンガーソンは続けた。「父の助言で、あなたとお嬢さんにとって、私たちのどちらがふさわしいか、娘さんに決めていただくためです。私は妻が4人しかいませんが、ドレバーは7人です。私の考えでは、自分の方に強い権利があると思います」

「違う、違う、スタンガーソン兄弟」もう1人が叫んだ。「問題は何人の妻を持っているかではなく、何人養えるかだ。私は父から製粉所を譲られていて、君より金持ちだ」

「しかし将来性は私が上だ」もう1人が興奮して言った。「神が私の父を召したとき、なめし場と革工場を受け継ぐ。それに私は年長で、教会の地位も上だ」

「それは娘さんの決めることだ」ドレバーがガラスに映った自分に笑いかけながら答えた。「彼女の決定に全て任せよう」

この話の間、ジョン・フェリアーは、この訪問者二人の背中を乗馬鞭で打ち付けたくなるのを必死でこらえながら、戸口に立っていた。

「いいか」彼はとうとう、二人につかつかと歩み寄ると言った。「私の娘が呼んだときは、来てよい。しかしそれまでは、お前らの面は見たくない」

二人のモルモン教徒は驚いて彼を見つめた。彼らからすれば、二人が競って娘に求婚するのは、本人にとっても父親にとっても最高の名誉のはずだった。

「部屋から出る場所が二つある」フェリアーは叫んだ。「玄関か、窓だ。どっちが望みだ?」

フェリアーの日に焼けた顔が非常にどう猛で、痩せた手があまりにも威嚇的だったので、訪問者は跳ね起き、慌てて逃げ出した。年老いた農夫は戸口まで追いかけた。

「決まったら教えろ」彼はせせら笑ってこう言った。

「後悔するぞ!」スタンガーソンが怒りに青ざめて叫んだ。「お前は予言者と四人会議を無視した。死ぬまで後悔するぞ」

「神の手はお前に鉄槌を下す」ドレバーが叫んだ。「神は立ち上がり、お前を罰するだろう」

「こっちが先に処罰を始めてやる」フェリアーは猛り狂って叫んだ。もしルーシーがひきとめなければ、拳銃を取りに上階まで駆け上がっていただろう。彼が娘の手をふりほどく前に、追いかけても無駄だと分かるほど、蹄の音は遠ざかっていた。

「もったいぶった若造が!」彼は額の汗を拭いながら叫んだ。「娘よ。私はあの二人のどちらかの妻になったお前を見るくらいなら、むしろ墓で会いたいくらいだ」

「私もよ、お父さん」彼女はきっぱりと答えた。「しかしジェファーソンがすぐに来るわ」

「そうだ。彼か来るまでにそう長くはかからん。早いほうがいい。次に彼らがどうでるか、分からんでな」

 時実、この不屈の老農夫と彼の養女を救うために、助言や助力を出来る能力を持った者が現れても良い頃だった。この入植の歴史全体で、これほどあからさまに長老の権威に対して反抗した事件はなかった。ちょっとした過ちでさえ、非常に厳格に罰せられるのなら、この謀反にどんな運命があるだろうか。フェリアーは彼の財産も立場も何の役に立たないことを知っていた。彼と同じほど豊かだと言われてきた別の男が神隠しにあっていた。そして彼らの財産は教会に没収されていた。フェリアーは勇敢な男だった。しかし自分を包むぼんやりとした、つかみ所のない恐怖に震えた。はっきりとした危険であれば覚悟を決めて立ち向かえた。しかしこの不安な状態には神経をすり減らした。彼は自分の恐怖を娘には見せず、何もかもたいしたことでないというそぶりをしていた。だが娘は、-愛情を持った鋭い目は-、はっきりと父の不安な気持ちを見破っていた。

フェアリーは自分の行動に対して、ヤングから伝言か抗議書が届くと予想していた。そして彼の予想は正しかった。しかし、それが届けられたのは、想像もつかない方法だった。次の朝、彼が目覚めると、驚いたことに、ベッドカバーのちょうど胸に上にちいさな四角い紙がピンで留められていた。そこには太くのたうつ文字で、こう書かれていた。

「お前の改心に29日与える。その後は-」

このダッシュが、他の何よりも恐怖を煽った。この警告文がどうやって部屋にやって来たのか、ジョン・フェリアーには理解できなかった。使用人は離れに寝ていた。そして扉と窓は全て鍵がかかっていた。彼は紙を丸め、娘には黙っていた。29日とは明らかにヤングが言った1月と釣り合う。こんな不可思議な力で武装した敵に、どんな強さや勇気が抵抗できるのだろうか。あのピンを打った手は、彼の心臓を突き刺していたかもしれない。そして彼は誰が自分を殺したか知ることは出来なかっただろう。

次の朝、彼はされに震え上がった。親子は朝食を食べるために席についていた。その時ルーシーが驚きの叫びをあげて、頭上を指差した。天井の真中に、燃え端のようなもので28の数字が走り書きされていた。娘にはこの意味が分からなかった。そして彼も娘に教えなかった。その夜、彼は寝ずに見張りをした。何も変わったことはなかった。それにもかかわらず、扉の外側にペンキで大きく27と書かれていた。

このように日は過ぎた。朝が来ると必ず、計算を続ける目に見えない敵は、一ヶ月の猶予期間の残り日数をどこか目立つ場所に書き込んでいた。

運命の数字は壁に現れる時もあり、床に現れる時もあった。時には庭の門や手すりにちいさな紙が貼ってあった。彼がいくら寝ずの晩をしても、ジョン・フェリアーにはこの日々の警告が何時実行されているのか、発見することができなかった。その印を目にすると、彼はほとんど迷信的な恐怖に襲われた。彼は徐々にやつれ、落ち着きを失った。彼の目には、狩られる動物のような不安の色が浮かびだした。今や、彼の人生でたった一つの望みは若き狩人が帰ってくることだけだった。

20が15になり、そして15が10になった。しかし彼からの頼りはなかった。ひとつずつ数字は減っていった。しかし彼からの連絡はなかった。馬に乗った男が道をカチャカチャと来るたび、御者が馬に対して怒鳴るたび、老夫婦はついに助けがやってきたと思い、門に駆け寄った。とうとう、5が4になり3になるのを見たとき、彼は失望し、逃げる望みを完全に失った。この入植地をぐるりと取り囲んでいる山岳地帯をほとんど知らない彼は、人の助けがなければ、どうすることもできないと分かっていた。人通りの多い道路は厳重に見張られ堅められており、長老会の指図がなければ、誰も通り抜けることはできなかった。どの道を選ぼうと、頭上にある一撃を避けることはできそうもなかった。しかし、娘にとって恥辱にも等しいことを承諾するくらいなら、むしろ死を選ぶというフェリアーの決意はゆらがなかった。

ある夜、彼はこの苦難をあれこれと考え、逃れる手段を空しく探しながら1人座っていた。その朝、家の壁に数字の2が現れていた。そして次の日は与えられた時間の最後の日になるはずだった。その後どうなるのだろうか?ありとあらゆる、漠然とした恐ろしい思いが彼の想像を埋め尽くしていた。そして娘は、彼がいなくなるとどうなるのだろうか。家を取り囲むこの見えない網から逃げる方法はないのか?彼はテーブルに顔をふせて、自分の不甲斐なさを思って泣いた。

あれは何だ?静けさの中で、彼は静かなひっかくような音を聞いた・・・ちいさな音だったが夜の静けさの中ではっきりと聞こえた。その音は家の戸口からやってきた。フェリアーは静かにホールまで行って耳をそばだてた。しばらく間があって、また小さく、秘密めいた音が繰り返された。明らかに誰かが扉の羽板を、本当にそっと叩いていた。秘密裁判の抹殺指令を執行に来た、真夜中の暗殺者か。それとも猶予の最終日が来たことをわざわざ告げに来た使者か。その瞬間、ジョン・フェリアーはこんな不安に神経を揺さぶられ、びくびくするくらいなら死んだ方がましがと思った。彼は前に飛び出して、門を引くと扉をパッと開けた。

外は全てが穏やかで静かだった。その夜はよく晴れ、星は頭上で明るくきらめいていた。柵と門に隔てられたちいさな前庭が、農夫の眼前に拡がっていた。しかし庭にも道にも人影はなかった。安堵のため息をついて、フェリアーは左右を見ていた。たまたま自分のすぐ足下を見ると、驚いたことに、うつぶせに大の字になって男が倒れていた。

彼はこれを見て仰天し、大声を出したい衝動を押さえるために手を喉元に当てると、壁にもたれかかった。最初に考えたのは、傷ついたか死にかけの人間が倒れているということだった。しかし彼の目の前で、それは蛇のように素早く音もなく、地面をよじるようにして進み、玄関口から入ってきた。いったん家に入るやいなや、男はパッと立ち上がり、扉をしめた。驚く農夫の前に、険しい顔をし、決意に満ちた表情のジェファーソン・ホープが立っていた。

「なんと!」ジョン・フェリアーはあえいだ。「なんと脅かす奴だ!なぜこんな風に入ってきた?」

「食べ物をくれ」ホープはかすれた声で言った。「48時間飲まず食わずだ」彼は夕食後のテーブルにまだ置かれていた冷えた肉とパンに飛びついた。そして荒々しくむさぼり食った。「ルーシーはくじけないで頑張っているか?」彼は空腹が満たされたとき、こう尋ねた。

「ああ、娘は怖い者なしだ」父は答えた。

「それはよかった。この家はあらゆる方向から監視されている。俺が這い上がってきたのもそのためだ。抜け目のないやつらのようだが、ワショーの狩人を捕まえられるわけがない」

ジョン・フェリアーは今、彼が献身的な支援者を得たと知って生き返った気がした。彼は青年のゴツゴツした手を取り、心を込めて強く握った。「お前は頼もしい男だ」彼は言った。「私たちと危険と困難を分かち合うために、ここまで来てくれる者などそうそういるものではない」

「うまいこと言うね」若き狩人は答えた。「俺はあんたのことを尊敬しているが、もしこの一件に関わっているのがあんた1人なら、俺はこんな面倒な事態に首をつっこむのは、二の足を踏むかもしれない。俺がここに来たのはルーシーのためだ。彼女にもしものことがあれば、ユタのホープ家が1人減るだろうからな」

「どうしたらいいんだ?」

「明日が最終日だ。したがって今夜行動しないとおしまいだ。俺はロバと馬2頭をイーグル峡谷に置いてきている。金はどれくらいある?」

「金で2千ドル、紙幣で五千ドルだ」

「いいだろう。それに加えて俺も同じくらいある。山を越えてカーソン・シティまで行かなければならない。ルーシーを起こす方がいい。使用人が同じ家に寝ていないのはよかった。」

フェリアーがすぐに旅に出るために娘を起こしにいったとき、ジェファーソン・ホープは食べられるものを手当たり次第ちいさな包みに詰め込んだ。そして経験上、山の水場は少なく非常にまばらだと分かっていたので陶器のカメに水を張った。彼が準備を整えるやいなや、農夫は娘ときちんと服を着て、出発の準備を整えて戻ってきた。恋人同士の挨拶は暖かいが短かった。1分が貴重だったからだ。そしてしなければならないことはたくさんあった。

「すぐに出発しなければならない」ジェファーソン・ホープは、危険の大きさを認めながらも、それを対決する決意を固めた男のように、小さな声だが断固とした口調で言った。「前後の入り口は見張られている。しかし注意すれば、横の窓から出て野原を横切っていける可能性がある。道に出たら、馬が待っている渓谷までたった2マイルだ。夜明けまでに山岳地帯を半分抜けているはずだ。」

「もし阻止されたら?」フェリアーは尋ねた。

ホープは上着の前から突き出ていた拳銃の台尻をぴしゃりと叩いた。「もし手に負えないくらい多ければ、2、3人は運命を共にさせてやる」彼は不気味に笑っていった。

部屋の明かりはすべて消されていた。暗い窓越しにフェリアーは、自分が所有し、今や永遠に放棄しようとしている畑を覗き込んだ。彼は長い間、これに人生を捧げてきた。しかし、娘の名誉と幸せを願う心は、失う財産に対する未練を上回った。さやさやと音を立てる木と、広大に広がる穀物畑は、どこまでも平和で幸福な風景に見えたので、殺人者の気配がその全体に潜んでいるのを見破ることは難しかった。しかし若い狩人の青ざめた顔とこわばった表情を見れば、彼がこの家にやってくるとき、嫌と言うほど危険な目にあってきたことは明らかだった。

フェリアーは金と紙幣の袋を持ち、ジェファーソン・ホープは乏しい食料と水を持ち、ルーシーは僅かな貴重品を入れた包みを持っていた。非常に慎重に、ゆっくりと窓を開け、彼らは黒い雲が闇をさらに暗くするのを待った。それから一人づつ窓を抜けて小さな庭に出た。息を潜め身をかがめ、彼等は庭をつまずきながら横切り、生け垣に身を潜めた。彼等はトウモロコシ畑に開いた切れ目まで生け垣に沿って移動した。彼等がちょうどその場所までついたとき、青年は二人の同行者をつかんで、陰の中へ引き倒した。二人はその場所に倒れたまま、無言で震えていた。

草原での訓練によって、ジェファーソン・ホープが山猫の耳を持っていたのは幸運だった。三人は、山フクロウのもの悲しい鳴き声が、ほんの数ヤードと離れていない場所から聞こえる寸前、あわやというタイミングでしゃがみこんだ。すぐに、少し離れた場所から別の鳴き声が答えた。同時に、彼等が目標としていた切れ目からぼんやりした暗い人影が、現れた。そして悲しげな鳴き声の合図がもう一度聞こえた。これに応じて二人目の男が暗がりから現れた。

「あしたの深夜」最初の男が言った。この男が首謀者のようだった。「ホイッパーウィルヨルタカが三度鳴いた時」

「それはいいな」もう一人が答えた。「ドレバー兄弟に言っておこうか?」

「伝えておけ。そして彼から残りの者に。9から7」

「7から5!」もう一人が返した。そして二人の人影は別の方向に足早に去った。彼等の最初の言葉は、明らかに何らかの合い言葉とその返答だ。足音が遠くに消え去るや否や、ジェファーソン・ホープはぱっと立ち上がり、親子が裂け目を抜けるのを助け、全力で畑を横切って先導した。彼は女性を支え、体力が切れた時はほとんど抱きかかえるようにして走った。

「急げ!急げ!」彼は時々、あえぐように言った。「歩哨の境界線を越えているところだ。速度が全てだ。急げ!」

幹線道路に出ると、彼等の足取りは速くなった。1度だけ、誰かと会ったが、なんとか畑の中に逃げ込み、目撃されなかった。街に着く途中、狩人は脇にそれ、山に向かう険しく狭い道に入った。黒いゴツゴツした山頂が2つ、夜空に高くそびえたっていた。その山間の渓谷が、馬をつないであるイーグル渓谷だった。ジェファーソン・ホープは的確な直感力で、巨石の間を抜け、干上がった河床を通り、岩に隠れて奥まった一角にたどりつくまで、道を間違えなかった。忠実な動物はそこにつながれていた。女性をロバに乗せ、金の袋を持った老人をフェリアー老人を馬に乗せると、ジェファーソンは、もう一頭の馬に乗って切り立った危険な道を先導した。

そこは、牙をむく自然と対峙するのに慣れていない人間にとっては、めまいがする道だった。片側は、千フィート以上のそびえたつ絶壁だ。黒く、厳しく、威圧的な道で、ゴツゴツした岩肌に見える長い玄武岩の柱は、石化した怪物のあばら骨のようだった。反対側は、巨石と瓦礫がごちゃ混ぜになり前進を阻んでいた。その間に不規則な道があった。場所によっては非常に細くなり、彼等は一列縦隊で進まねばならなかった。そして非常に荒れた道のため、そこを越えていけるのは熟練の乗り手だけだった。しかし、あらゆる危険と困難にもかかわらず、逃亡者達の心は明るかった。一歩進むごとに、彼らと、彼らが脱出した恐怖の専制国の距離は増していった。

しかしまもなく彼らはまだ聖者達の支配権の中にいる証拠と出会った。彼らも荒々しく荒廃した道にさしかかっていた。その時、女性が驚いて叫び声をあげ、頭上を指差した。道を監視できる場所にある、くっきりと空に向かってそびえ立つ黒い岩の上に、一人の歩哨が立っていた。彼らが気付くと同時に、歩哨も彼らを発見した。そして軍隊式の「誰何」が、静かな渓谷に響き渡った。

「ネバダに行く旅の者だ」ジェファーソン・ホープが鞍にぶら下げたライフルに手をおいていった。

見張りが銃を手に、彼らの返答を疑うかのように覗き下ろしているのが見えた。

「誰の許しを得て?」彼は尋ねた。

「四長老だ」フェリアーが答えた。彼はモルモン教徒としての経験で、引き合いに出せる最高の権威はこれだと知っていた。

「9から7」歩哨が叫んだ。

「7から5」すぐにジェファーソン・ホープが庭で耳にした応答を思い出して応答した。

「通れ 神が共にあらんことを」頭上の男が言った。歩哨の持ち場を過ぎると道は広がっていた。そして馬は次第に駆けることが出来るようになった。振り返ると、見張りの男が銃に寄りかかっている姿が目に入った。そして彼らは選ばれし民の境界点を通過し、目の前に自由が広がっていることを知った。

第5章

復讐の天使達

彼らは一晩中、複雑の渓谷を過ぎ、岩がごろごろする不規則な道を越えていった。何度となく道に迷った。しかしホープが山に精通していたおかげで、正しい道に戻ることができた。夜が明けたとき、荒々しいが素晴らしい光景が目前に現れた。見回すと、雪を除いた巨大な山頂が、水平線の彼方からお互いの山肩を覗き込むように取り囲んでいた。彼らの両側にある岩だらけの土手は非常に険しく、唐松も松も頂から吊されたように見え、ちょっと突風が吹けば彼らの頭上から転げ落ちてきそだった。これはまったく根拠のない恐れではなかった。不毛の谷には似たような経過で落ちた木や巨石が、分厚く堆積していたのだ。彼らが通りすぎた時でさえ、1つの巨石がものすごい音を立てて転げ落ち、静かな峡谷に木霊を響き渡ったので、馬が怯えて駆けだしたほどだ。

東の水平線からゆっくりと太陽が昇り、壮大な山頂の頂が祝祭のしゃんでりあのように、1つずつ照らし出され、やがて全体が赤く輝いた。壮観な景色に三人の逃亡者の心は奮い立ち、新たな活力がわいてきた。彼らは、奔流が渓谷を洗う場所で一休みし、慌てて朝食を食べる間に馬に水を与えた。

ルーシーと父はもう少し長く休んでいたかったかもしれないが、ジェファーソン・ホープは容赦しなかった。「この時刻までに、敵は俺らの後を追い始めているはずだ」彼は言った。「すべてこちらの速度次第だ。カーソンで安全を確保すれば、残りの人生全部休むこともできる」

その日一日中、彼らは渓谷を越えるために奮闘した。そして夜までに、敵を30マイル以上離したと計算した。夜が来ると、冷たい風をいくらか防いでくれる張り出した岩の下を選び、そこで、身を寄せ合って暖を取り、数時間の睡眠をとった。しかし夜明け前、彼らは起き出してもう1度前進を始めた。後を追ってくる者の気配はなく、ジェファーソン・ホープは彼らに敵意を持った恐ろしい組織の手から完全に逃れたと考え始めていた。彼は、鉄の爪がどれほど遠くまで及び、どれほどの早さでそれが彼らをつかんで押しつぶすかを、ほとんど知らなかった。

逃避行の二日目の昼頃になると、乏しい食料がつき始めた。しかし狩人にとって、これは心配することではなかった。なぜなら山には狩猟できる獲物がいて、食料を得るためには以前からしばしば銃に頼る必要があったからだ。周りが囲われて人目につかない場所を選ぶと、彼は枯木を何本か積み重ね、親子がそれにあたって暖を取れるように赤々とたき火を起こした。彼らは今や、ほとんど海抜五千フィート近くにまで達していたので、風は冷たく身を切るようだった。馬をつなぎ、ルーシーに別れを告げ、彼は銃を肩にかけ、何か獲物を見つけようと探索に出かけた。振り返ると、老人と若い女性がたき火の炎に向かってしゃがんでいるのが見えた。三頭の馬はその後ろにじっと立っていた。その後、二人の姿は岩に隠れて見えなくなった。

彼は渓谷から渓谷へと、二マイルほど歩いた。しかし獲物はいなかった。木の幹の印や、他の痕跡から見て、彼は近くにかなりのクマがいると判断した。二時間以上無駄に探した後、とうとう彼は諦めて戻ろうと思い出していた。その時、ふと上を見て、彼は喜びに震えるような光景を目にした。3~400フィート上のつきだした小山の端に、羊にちょっと似ているが、巨大な角が二本の生えている動物が立っていた。ビッグホーンは、-そう呼ばれていた-、おそらく狩人からは見えないところにいる群れの見張りをしていたのだろう。しかし幸いその一匹は向こうを向いており、彼に気付かなかった。うつぶせになり、彼はライフルを岩に乗せた。そして長い時間をかけて、確実な狙いを定めてから引き金をひいた。その動物は空に跳ね上がり、絶壁の端で一瞬よろめいて、それから下の谷を転げ落ちた。

その動物は重すぎて担ぎ上げることは出来なかったので、狩人は片足と脇腹肉の一部を刈り取るだけで満足した。すでに夕闇が迫っていたからだ。しかし出発してすぐに、困難が立ちはだかっているのに気付いた。夢中になるあまり、彼は見覚えのある道を大きく外れて渓谷に迷い込んでいた。そして自分が通ってきた道を探し出すのは並大抵ではなかった。彼が分け入った渓谷は、たくさんの小さな峡谷に枝分かれしており、どの谷も非常に似ていて、区別をつけることができなかった。彼は1つの峡谷を一マイルかそれ以上もたどったが、間違いなくそれまで見たことがない谷川に出た。彼は間違ったところを曲がったと確信し、反対の方に行ってみた。しかしこれも間違っていた。急速に夕暮れが迫り、ほとんど宵闇に包まれようとした頃、彼は遂に見覚えのある峡谷を発見した。それでも正しい道筋をたどるのは容易ではなかった。月はまだ出ておらず、両側の高い絶壁で、薄暗がりの光が一層暗くなっていた。荷物の重さが肩に食い込み、激しい活動に身体は疲れ切り、彼はヨロヨロと進んだ。一歩ごとにルーシーに近づいているのだ、そして今、残りの旅が確実にできるだけの食料を運んでいるのだ、彼はこう考えて、くじけそうな心を奮い立たせた。

彼はとうとう、二人と別れた渓谷の入り口に到着した。暗闇の中でも、彼は隣接する絶壁の輪郭の形を見分けることができた。彼は考えた。ほとんど五時間近くも留守にしていたので、二人はきっと、自分を心配して待っているに違いない。嬉しくなって、彼は口に手を当て、これから行く合図としてハローと大声で叫ぶと、その声は谷に木霊した。彼は叫ぶのを中止して、返事に耳をすませた。自分の叫び声以外には、何も聞こえなかった。それは静かな渓谷にわびしく響き渡り、無数の繰り返しにとなって彼の耳に返ってきた。彼はもう1度、前よりもっと大声で叫んだ。だが、今度もほんの少し前に別れたばかりの同行者からは、ささやき声さえも返ってこなかった。ぽんやりとした言葉にならない恐怖に襲われ、彼は動揺のあまり貴重な食料を落として、狂ったように駆けだした。

角を曲がると、たき火を起こした場所全体が見通せた。そこにはまだ赤く光る木の燃えがらの山があった。しかしそれは明らかに彼が出発してから、放置されていた。それまでと同じ完全な静けさがまだあたりを支配していた。彼の恐れは完全に確信に変わり、急いでそこまで駆け寄った。たき火の燃え後の近くには生命の痕跡はなかった、動物も、男性も、女性も、すべてが消えていた。彼がいない間に、何か突然の事故が発生したのは、明らかだった、・・・・全員を巻き込んだにもかかわらず、何1つその痕跡を残さない惨事が。

あまりの衝撃に狼狽し呆然として、ジェファーソン・ホープは目が回るのを感じた。そして倒れないようにライフルにもたれかかる必要があった。しかし彼は本質的に行動できる男だった。そして一時的な無気力から立ち直った。

彼はくすぶっているたき火の中から半分燃え残った木をつかむと、息を吹き上げて燃え上がらせた。そしてその明かりの助けを借りて、小さな野営地を調べ始めた。あたりの地面は、馬の蹄の後でいっぱいだった。馬に乗った男の大きな集団が逃亡者においついた跡が見つかった。そしてその足跡の方向を調べると、彼らがその後ソルトレイクシティの方向に引き返したと分かった。彼らは親子を二人とも連れ帰ったのか?ジェファーソン・ホープは、間違いなくそうなったとほとんど結論を出しかけていた。その時、ある物体が目にとまり、彼は総毛立った。野営地の片側を少し進んだ場所に、赤っぽい土で出来た小山があった。前に見たときは、間違いなくそんなものはなかった。それは紛れもなく新しく掘られた墓だった。若き狩人がそれに近づくと,それに棒が突き立ててあるのが見えた。棒の2つに割れた部分に、一枚の紙が挟まれていた。紙に書かれた碑文は短いが的確だった。

ジョン・フェリアー
元ソルトレイクシティ市民
1860年8月4日死去

それでは、ほんの少し前に別れたばかりの、あのがっしりした老人は死んだのか。そしてこれが彼の墓碑銘の全てか。ジェファーソン・ホープは、もしや二つ目の墓があるのではと、狂ったようにあたりを見回した。しかしその痕跡はなかった。ルーシーは、長老の息子のハーレムの一員となるという当初の目的を達成させるため、恐るべき追跡者に連れ去られていた。フェリアーは彼女の運命を、そしてそれを防ぐことができなかった自分の無力さを、はっきりと悟った。彼は、自分の老夫婦と一緒に、静かな最後の安らぎの地に横たわりたいと願った。

しかし再び、彼の行動的な精神は絶望からわき起こった無気力を振り払った。もし他に何も残されていないとしても、少なくとも彼の人生を復讐にささげることはできる。不屈の忍耐と粘り強さに加え、ジェファーソン・ホープはあくことのない執念深さという能力を備えていた。それは彼が暮らしをともにしていたインディアンから学んだのかも知れなかった。無人のたき火の側に立ち尽くしているとき、彼は感じていた。この苦悩を和らげうるものはただひとつ、自分自身の手で敵に徹底的に完全な復讐を下すことだ。彼は、この強い意志と疲れを知らないエネルギーを最後まで捧げると、堅く心に決めた。恐ろしく青ざめた顔で、彼は食料を落とした場所まで戻り、くすぶったたき火の中でかき回し、数日食いつなぐ分に火を通した。彼はそれをひとつの包みにまとめると、非常に疲れていたが、復讐の天使たちの後を追って山を越え、歩いて戻り始めた。
五日間、彼は疲れた身体と痛む足で、苦しみながら、1度は馬の背に乗って横断してきた渓谷を越えた。夜になると彼は岩間にばたんと横になり、数時間睡眠をとった。しかし彼は夜明け前になると必ず前進を始めた。六日目、彼は三人が不幸な運命の逃避を開始したイーグル峡谷にたどり着いた。そこから聖者たちの故郷を見下ろすことができた。ボロボロになって疲れ切り、ライフルにもたれかかった彼は、足下に大きく広がる静かな街に痩せた手を猛烈に振り上げた。街をよく見ると、主要道路のあちこちに旗が立ち、その他にも祭典の印があるのに気がついた。これにどういう意味があるのかを考えあぐねていた時、馬の蹄がカチャカチャいう音が聞こえた。そして馬に乗った男が彼の方にやってくるのが見えた。近づいてみると、クーパーという名前のモルモン教徒だと分かった。彼はこの男に何度か手助けしてやった事があった。そのため、ルーシー・フェリアーの運命がどうなったかを調べるために、すぐ側まで来たとき、声をかけた。

「俺はジェファーソン・ホープだ」彼は言った。「覚えているだろう」

モルモン教徒は彼を見てあからさまに驚いた。実際、この幽霊のように真っ青な顔をして激しくどう猛な目をした。ボロボロの服を着て乱れた髪の放浪者が、かつてのしゃれた身なりの若き狩人と見分けるのは難しかった。しかし、とうとう彼の身元が確認できると、この男の驚きは狼狽に変わった。

「ここに来るなんて気でも狂ったか」彼は叫んだ。「おまえと話しているところを見られたら命に係わる。お前にはフェリアー家を逃がす手伝いをした件で聖四人から令状が出ているぞ」

「俺はそんなやつら怖くない、そいつらの令状も」ホープは真剣に言った。「お前はこの件について何か知っているはずだ。お前の恩義に厚い気持ちにかけて尋ねたい。俺たちはずっと友達だったじゃないか。お願いだ。教えてくれ。」

「何が訊きたいんだ?」モルモン教徒は不安そうに答えた。「早くしてくれ。岩に耳あり、木に目ありだ」

「ルーシー・フェリアーはどうなった?」

「昨日ドレバーと結婚した。しっかりしろ。おい。しっかりしろ。幽霊みたいだぞ」

「俺のことはかまうな」ホープは弱々しく言った。彼は唇まで真っ青になり、もたれかかっていた岩にへたり込んだ。「結婚と言ったな?」

「昨日結婚した、-それであの旗が教会の上にあるんだ。どちらが彼女と結婚するかで、ドレバーの息子とスタンガーソンの息子が言い合った。両方とも追跡隊にいて、スタンガーソンが父親を撃った。だからスタンガーソンの方に権利があると思われたが、ふたりが評議会で話し合ったとき、ドレバーの仲間の方が強かったので、予言者は彼女をドレバーに渡した。しかし誰にしても、もう長くはもたないだろう。昨日、彼女の顔を見たら死相が漂っていた。人間の女というより幽霊にそっくりだった。おい、行くのか?」

「そうだ、行く」ジェファーソン・ホープは言った。彼は腰をかけていた岩から立ち上がっていた。顔は大理石を掘ったかのように硬く硬直した表情になっており、目には復讐の炎が燃えたぎっていた。

「どこに行くつもりだ?」

「気にするな」彼は答えた。それから、銃を肩に吊すと、峡谷を降りて山の奥深く、野獣がウロウロする場所へと分け入った。彼自身が、どの野獣よりもどう猛で危険だった。

哀れにもあのモルモン教徒の予測は的中した。父親の恐ろしい死のせいか、または彼女が無理強いされた忌まわしい結婚のためかは不明だが、悲運のルーシーはやせ衰え、2度と起き上がることなく、一月と持たず死んだ。彼女の大酒飲みの夫は、ジョンフェリアーの財産が主な目的で結婚していたので、この死別にほとんど嘆かなかった。しかし他の妻たちは嘆き悲しみ、モルモン教の習慣にしたがって埋葬の前に通夜を開いた。妻たちらが朝早い時間に棺を取り囲んでいたその時、女たちは言葉も出ないほど恐れ、驚いたが-、扉がさっと開かれると、ボロボロの服を着た、凶暴な顔つきの日に焼けた男が、部屋の中につかつかと入ってきた。男はすくみあがった女性たちに目もくれず、無言で、かつてルーシー・フェリアーの汚れなき魂を閉じ込めていた物言わぬ白い身体に歩み寄った。男は彼女にかがみこんで、冷たい額にうやうやしく唇を押し当て、それからさっと手を持ち上げ、指から結婚指輪を抜き取った。「こんなものをつけて埋葬させるか」彼は荒々しい声で怒鳴った。そして女達が叫び声を上げる前に、階段を降りて姿を消した。あまりにも奇妙で素早い出来事だったので、もし花嫁の印である金の指輪が消え失せていたという動かしがたい事実がなかったら、目撃者は自分達が信じることも、他人に信じさせることも出来なかったかもしれない。

何ヶ月もの間、ジェファーソン・ホープは奇妙な荒れた生活を送り、彼にとりついた激しい復讐の欲求を心の中で育てながら、山の中にいた。街では噂がたった。郊外で奇妙な人影が歩き回っているのを見た。寂しい山間の渓谷にも出没すると。ある時、弾丸がスタンガーソンの窓に飛び込み、彼から1フィートと離れていない壁に当たってひしゃげた。別の時、ドレバーが崖の下を通っていると、巨石が崩れて倒れかかっていた。彼はうつぶせになって、やっとのことで恐ろしい死をまぬがれた。ふたりのモルモン教徒が命を狙われる理由を理解するのにそう長くはかからなかった。そして彼らの敵を捕まえるか殺そうとして、何度も山を捜索した。しかしいつも無駄骨に終わった。その後、彼らは用心して、1人で外出したり、夜更けに外に出ないようにし、家を警護した。時がたつと、敵対者の噂がなくなってきたため、この警戒を緩めることができた。そして2人は、男の執念は時とともに冷めたのだと考えた。

まったくそうではなかった。それはむしろ増大していた。狩人は堅く屈しない性格だった。そして、復讐をするという考えは、何事にも勝って完全に心を専有しており、他の感情が入る余地は全くなかった。しかし、彼は何よりも実務的な人間だった。彼はすぐに、鉄の身体をもってしても、自分が課している絶え間ない緊張に耐えられないことに気付いた。野宿と栄養不足によって彼は消耗し始めていた。もしやまのなかで犬のように死んだら、復讐はどうなる?しかし、もしこれが続けばそのような死は間違いなく起きる。彼はそれを敵を利するものだと感じた。そのため、彼は不本意ながら、ネバダ鉱山に戻り、健康を回復し、自分の目的を追求するのに十分な金を蓄えようとした。

彼は長くても一年たてば戻るつもりだった。しかし予期せぬ事態が次々に起き、彼は5年近く鉱山を離れることができなかった。しかしその期間が過ぎても、不正の記憶と復讐の渇望は、彼がジョン・フェリアーの墓の側に立っていたあの永遠にわすれられない夜と全く変わりがなかった。彼は変装し、偽名でソルトレイクシティに戻った。彼が正義と信じる者を獲得するなら、自分の命がどうなろうとも構わなかった。そこで彼は悪い知らせが待ち受けていたのを知った。数ヶ月前、選ばれし民の間で分裂が起きていた。教会の若い構成員の一部が、長老達の権威に反旗を翻し、一定数の不平分子が離脱するという結果になっていた。彼らはユタを去り異教徒になった。この中にドレバーとスタンガーソンがいた。そして彼らがどこに行ったか誰も知らなかった。噂では、ドレバーは財産の大部分を金に替えることに成功し、かなりの大金を手にして去っていた。一方、同行者のスタンガーソンは、どちらかといえば、金に不自由していた。しかし彼らの消息については手がかりは全くなかった。

いかに執念深い人物でも、このような困難に直面すれば、たいていの男はきっぱりと復讐する意志を捨てたかもしれない。しかしジェファーソン・ホープは一瞬たりとも逡巡しなかった。彼は十分な生活能力を持っていた。それを使って仕事し、食いつなぎながら、敵を求めてアメリカ中を街から街へ旅した。年は過ぎ、黒髪には白いものが混じり始めた。しかしそれでも彼は猟犬のようにさまよい歩いていた。彼の心は、人生を捧げたただ1つの目的に、一心に傾けられていた。ついに彼の忍耐力は報われた。それは窓の中にちらっと顔が見えただけだった。しかしその一瞬で、彼が追い求める男達はオハイオのクリーブランドにいると分かった。彼は復讐の計画を全て整えて、自分のあばら家に戻った。しかしドレバーは、たまたま窓から外を眺めたとき、通りに放浪者がいて、その目に紛れもない殺意があることに気付いていた。彼は私設秘書となっていたスタンガーソンと一緒に、治安判事の元に急いだ。

そして嫉妬深く憎悪に満ちた昔の敵に命の危険に晒されていると説明した。その夜、ジェファーソンは身柄を拘束された。そして保証人を見つけることができなかったので、数週間拘留された。彼がやっと自由の身になった時、ドレバーの家は引き払われ、彼と秘書はヨーロッパに向かって旅立っていたことがわかった。

またしても復讐は挫折した。そしてまたしても彼の憎悪は濃縮され、追跡を継続することへとかきたてられた。 しかし資金が不足していたので、彼は迫り来る旅行に向けて1ドルを惜しみながら、今回もしばらく働かなければならなかった、遂に、生活を保つのに十分な金を貯め、彼はヨーロッパに旅立った。そしてどんなつまらない仕事にもつきながら、街から街へと敵を追った。しかし逃亡者に追いつくことはできなかった。彼がサンクトベテルブルグに到着した時、彼らはパリに向かって旅立っていた。そしてそこまで追って行ったとき、彼らはちょうどコペンハーゲンに出発したと分かった。デンマークの首都で、彼はまたしても数日間遅れをとった。彼らはロンドンに向けて旅立っていた。彼はその街を探しまわった末、遂に彼らを見つけることに成功した。そこでどんなことが起きたか。これについては、我々が既に多大なる恩恵を受けているワトソン博士の日記にきちんと記録された、この老いた狩人自身の説明を聞くに勝るものはない。

第六章

ジョン・ワトソン医学博士の回顧録の続き

捕まえた男は激しく抵抗したが、我々を傷つけようという意図はなかったようだ。自分が抵抗できなくなったのに気付くと、彼はにこやかにほほえんで、この格闘で誰も怪我をしていなければよかったが、と話した。「あんた達は俺を警察所につれていこうとしているらしいが」彼はシャーロックホームズに言った。「俺の馬車が戸口にあるよ。もし足を自由にしてもらえればそこまでは、自分で歩いて行くよ。俺は子供と違って持ち上げるのは大変だぞ」

グレッグソンとレストレードはこの提案がちょっとふてぶてしいと思ったようで、顔を見合わせた。しかしホームズはすぐに逮捕者の言葉を受け入れ、足首の周りに巻き付けたタオルを緩めた。かれば立ち上がり、もう1度自由になったのを自分で確かめるように足を伸ばした。私は確か、彼を見回して、この男以上に力強い体格の人間はほとんど目にしたことがないと思った記憶がある。そして彼の日に焼けた黒い顔には、彼の体力と同様、恐るべき決意と活動力がみなぎっていた。

「どこかに警察署長の空きがあれば、あんたが適役だと思うな」彼はホームズを心から称賛するように見つめ、こう言った。「あんたは見事な手腕で俺を追い詰めたよ」

「一緒に来てくれ」ホームズは2人の警部に言った。

「私が運転しよう」レストレードが言った。

「結構!グレッグソンと僕は中に入ろう。君もだ、先生。君はこの事件に興味があったし、ついて来てもいいんじゃないかな」

私は喜んで同意した、そして我々は全員一緒に階段を降りた。逮捕された男は逃げようとせず、おとなしく自分の馬車に乗り込み、その後から我々は乗り込んだ。レストレードは御者台に乗り、馬に鞭をくれた。そしてあっという間に目的地に着いた。我々は小さな部屋に案内された。そこで捜査官が逮捕者の名前と、殺人で告発された被害者の名前を書き留めた。捜査官は色白で感情に乏しい男だった。彼は単調で機械的な方法で職務を遂行していた。「容疑者は一週間以内に治安判事と引き合わされる」彼は言った。「それまでの間、ジェファーソン・ホープ、何か言いたいことはあるか?君の言葉は記録され、君の不利になるかもしれないと警告しておく」

「言いたいことは山ほどあるね」容疑者はゆっくりと言った。「紳士諸君に全てを話したい」

「裁判まで控えておいたほうがいいのではないか?」警部が尋ねた。

「俺はきっと裁判にかからんだろう」彼が答えた。「驚かなくてもいい。自殺しようと考えているんじゃない。あんたは医者か?」彼は最後の質問をした際、恐ろしい黒い背を私に向けた。

「そうだ」私は答えた。

「じゃ、ここに手を当ててみろ」彼はにやりとし、手錠をかけられた手を胸の方に動かして言った。

言われたとおりにした私は、すぐに体内で恐ろしい鼓動と振動が発生していることに気づいた。彼の胸壁は、あたかも内側で強力な発動機が動いている脆い建物のようにブルブルと震えていた。部屋の静けさのなかで、私は同じ場所から鈍くブンブンという音を聞くことができた。

「これは」私は叫んだ。「大動脈瘤だ!」

「そういうらしいね」彼は穏やかに言った。「先週これで医者に言ったら、遠からず破裂する運命だと言ってたね。何年もかけて徐々に悪くなってきた。ソルトレイクシティの山の中で野宿しすぎた上に、栄養不足のせいでこうなってしまった。俺は自分の仕事をやり遂げた。何時死んでもかまわんが、俺はこの事件の背景についてちょっと言い残しておきたい。普通の通り魔として名を残したくないんでね」

捜査官と2人の警部は、彼に話しをさせることの妥当性について急遽話し合った。

「先生、緊急の危険があるとお考えですか?」捜査官が尋ねた。

「間違いありません」私は答えた。

「それなら司法の利益のため、明らかに彼の供述を取るのが我々の責務ですね」捜査官は言った。「自由に話してよい。もう一度言うが話したことは記録される」

「失礼だが座らせてもらいます」容疑者はすぐ、言葉通りに座りながら言った。「この動脈瘤のおかげで疲れやすい。それに半時間前の格闘の疲れが残っている。俺は墓穴に片足を突っ込んでいるから、あんた方に嘘を言うことはない。俺が言うことは全部間違いない事実だ。そしてそれをあんた方がどう扱おうが、俺の知ったことじゃない」

こう言って、ジェファーソン・ホープは椅子にもたれかかり、驚くべき話を始めた。彼はまるで日常の出来事を話すかのように、静かで体系的な言い方で話し始めた。私は、逮捕者の話を正確に言葉通り書き下ろしたレストレードの手帳を参照したので、ここから先の話の供述の正確性は保証することができる。

「なぜ俺がこの男達を憎むか、あんた方にはたいした問題じゃないだろう」かれは言った。「こいつらが2人・・・・父と娘だ・・・・、の死に関して有罪だと言えば十分だ、そのむくいとして自分の命を奪われたのだ。こいつらが犯罪を犯してから、ここまで時間がたってしまった以上、俺には法律でこいつらを確実に有罪にする手段がなかった。しかし俺はこいつらの罪を知っていた。だから俺は裁判官、陪審員、執行者の全てを1人でやると決心した。もしあんたらに男としての気概があって、同じ立場に立たされたとしたら、きっと同じことをしたはずだ」

「俺が言った女性は20年前に俺と結婚するはずだった。彼女は無理矢理このドレバーと結婚させられ、それで命を落とした。俺は死んだ彼女の指から結婚指輪を抜き取った。そして、この指輪を死に際のあいつらの目の前に突きつけ、死ぬ前に、罰せらる原因となった罪を思い出させてやると誓った。俺は指輪を肌身離さず持ち歩き、奴と共犯者を捕まえるまで2つの大陸を越えて追跡した。奴らは俺が疲れて諦めると思った。しかしそんなことは出来なかった。もし俺が明日死んだら、-非常にありそうだが-、この世でやるべき自分の仕事を成し終えた、・・・・と思いながら死ぬだろう。奴らは俺の手によって滅んだ。俺には何1つ、望みも願いも残っていない」

「奴らは金持ちで俺は金がなかった。だから俺にとって追跡は簡単ではなかった。俺がロンドンに着いた時、ほとんど一文無しだった。それで俺は生活の糧を得るために、何かで働かなければならないと気付いた。馬を走らせたり、乗ったりするのは俺にとって歩くように自然なものだ。だから俺は辻馬車の事務所に応募し、すぐに採用された。俺は毎週一定額以上を払わなければならないが、それ以上はいくらでも自分のものにできた。そんなに多いことはほとんどなかったが、俺はなんとか食いつないだ。一番大変だったのは道を覚えることだ。俺はここまで作られた迷路の中で、この都市が一番ややこしいと思ったよ。しかし俺は地図を横に置き、いったん大きなホテルや駅を見つけた時は、上手くやっていけたよ」

「ごき2人がどこに住んでるか突き止めるまでかなり手間取った。しかし俺は、捜査に捜査を重ね、遂に奴らと巡り会った。奴らは河の向こう側のキャンバーウェルの下宿屋にいた。いったん居所を突き止めれば、もう後は思いのままだと分かっていた。俺は顎髭を生やしていた。奴らに見抜かれる可能性はない。俺は好機に出会うまであいつらの後をつけまわした。俺は今度こそ、奴らを逃がさないと決心していた」

「それでも危うくあいつらに逃げられそうになった。ロンドンのどこに出歩こうとも、俺はいつもぴったりと後をつけた。ある時は自分の馬車でつけ、あるときは歩いてつけた。しかし馬車が一番だった。そうすれば奴らは俺から逃げられなかったからだ。俺が稼ぐことができるのは、朝早くか夜遅くだけだったから、雇用主への支払いが滞りだした。しかし俺は、追い求めている男を捕まえることができるなら気にならなかった。」

「しかし奴らは非常に悪賢かった。奴らはつけられる可能性があると思っていたに違いない。決して1人で出かけようとしなかったし、日が暮れてからも外出しなかった。俺は奴らの後を二週間毎日馬車で追ったが、1度も2人が別々の場面を見なかった。ドレバーは半ぷんくらい酔っ払っていたが、スタンガーソンは居眠りするのも見たこともなかった。俺は奴らを夜遅く、朝早く見張ったが、まったくチャンスに巡り会わなかった。しかし俺はくじけなかった。好機がもうすぐやってくるという予感があったのだ。ただ1つ、俺の胸のこいつが、仕事を完遂するより直前に破裂してしまうのだけが怖かった」

「遂にチャンスがやってきた。俺が馬車でトーキー・テラスを行き来していた時だ。俺は、奴らの戸口の前を辻馬車が通りかかったのを目にした。奴らはそれに乗ろうと、呼び止めた。まもなく、荷物が運び出された。しばらくして、ドレバーとスタンガーソンが出て来て乗り込み、出発した。俺は非常に落ち着かない気持ちで、馬に鞭をくれて見失わないようにつけた。俺は奴らがすみかを変えようとしているのではないかと心配だった。奴らはイーストン駅で降りた。俺は馬をボーイに預けて、プラットホームまで追いかけた。奴らがリバプール行きの列車について尋ねているのが聞こえた。そして車掌はそれがちょうど出たところで、次のは何時間か後だと答えた。スタンガーソンはイライラしているようだったが、ドレバーは喜んでいるようだった。俺は人混みの中で非常に接近していたので、奴らが話していることが全て聞き取れた。ドレバーは自分でやりたいちょっとした用事があると言い、相棒に、待っていればすぐに戻ってくると言った。スタンガーソンはそれを諫め、ずっと一緒に行動すると堅く決心したことを指摘した。ドレバーは繊細な用事なので1人で行く必要があると答えた。俺はスタンガーソンが何と言ったか聞き取れなかったが、ドレバーは猛然と罵りだした。そしてお前はただの使用人に過ぎないから、でしゃばって指摘するべきでないと指摘した。これで、秘書は割に合わない仕事をやめ、もし最終列車に間に合わなければ、ハリディのプライベートホテルで落ち合うことにしようとだけ打ち合わせをした。これに対してドレバーは、十一時前にプラットホームに戻ってくるつもりだと答えた。そして駅を出て行った」

「俺が長い間待ち望んでいた瞬間がついに来た。俺は敵を手中にした。2人ならお互いを守れるかもしれないが、1人ずつなら俺の思うままだ。しかし、俺は不用意に事を急がなかった。既に計画を練ってあったのだ。あの犯罪者が誰に襲われ、そしてなぜ懲罰が下ったのか、これに気付く時間を与えない限り、復讐心が満たされない。俺は自分をコケにした男に、昔の罪から逃れられなかったのだと、理解させることが出来る計画を組み立てていた。たまたま数日前、ブリクストンロードの家を何軒か管理する仕事をしている男が、鍵を1つ馬車の中に落としていった。その夜、落とし物の照会が来て鍵は返した。しかしその間に俺はその型をとり、複製を作らせていた。これを使って、俺はこの大都会に少なくとも1カ所、邪魔の入らない場所を手に入れた。この時、俺が解決しなければならない難問は、どうやってドレバーをその家につれていくかという事だった。」

「奴は道を歩いていき、一、二軒の酒場に入った。最後の所では30分近くいた。出て来たとき、奴は足がもつれており、明らかにできあがっていた。俺のすぐ前に馬車がいて、奴はそれに声をかけた。俺はその馬車にぴったりとついた。俺の馬の鼻先が奴の業者から1ヤードさえ離れることはなかった。馬車はワーテルロー橋をガタガタとこえ、さらに何マイルか進み、驚いたことに、もう1度やつが下宿していた家に戻ってきた。俺は、どういうつもりで奴がここに帰ってきたのか想像もつかなかった。しかし俺はさらに進み続け、家から100ヤードかそこら先で馬車を止めた。彼は家に入った。そして馬車は走り去った。よければ水を1杯もらえんかな。話していて口がカラカラだ。」

私がコップを手渡すと、彼は飲み干した。

「ちょっとマシになった」彼は言った。「さて、俺は15分かそれ以上待っていた。その時突然、家の中で格闘が始まったような大きな音がした。次の瞬間、扉がパッと開いて2人の男が現れた。1人はドレバーで、もう1人は俺が見たことない青年だった。この青年はドレバーの襟首をつかみ、踏み段の一番上まで来たとき、ドレバーをぐっと押して蹴り上げた。それでドレバーは道の半ばまで飛び出た。『このケダモノが!!』彼はステッキをドレバーに向けて振りながら叫んだ。『無垢の娘を侮辱したらどうなるか教えてやる』青年を非常に興奮していたので、あの意気地無しがよろめきながらも、全力で逃げていなかったら、ドレバーを杖で打ちのめしていたと思う。奴は通りの角まで走り、俺の馬車をみつけると、呼びつけて飛び乗った。『ハリディのプライベートホテルまでいけ』彼は叫んだ」

「俺が奴をしっかりと馬車の中に入れた時、俺の心臓は非常に高鳴り、この最後の瞬間になって動脈瘤が破裂しないかと心配になった。俺はどうするのが一番いいか色々考えながら、ゆっくりと馬車を走らせた。俺はただちに奴を郊外に連れていって、どこか人気のない道で最後の話し合いをしようと思い、ほとんどそう決めかけていた。その時、奴は俺のためにその問題を解決してくれた。奴は、また酒が飲みたいという発作に襲われ、俺に安酒場の外で停めろと指示した。彼は待っていろと言い残して入っていった。そこで奴は閉店時間まで居残り、出て来た時はへべれけに酔っ払っていった。俺は獲物を手中にしたと悟った。」

「俺が奴を無慈悲に殺すつもりだったとは想像しないでくれ。もしそうしたとしても間違いなく正義の行いに過ぎなかっただろう。しかしそうすることは出来なかった。俺は長い間、もし奴がその機会を利用するなら、奴には生き延びるチャンスを与えると決めていた。俺はアメリカで放ろうしていたとき、色々な仕事に就いたが、1度ヨーク大学の研究室で用務員と掃除人をやっこことがある。ある日、教授が毒物について講義をしていて、生徒達にある種のアルカロイドを見せた。彼はそれが、南アメリカの矢毒から抽出した非常に強力な毒で、どんなに少量でも摂取すると即死すると話していた。俺はこの薬を入れている瓶を突き止め、誰もいない時に失敬した。俺は製材も非常に上手かったのでこのアルカロイドを小さな水溶性の丸薬に仕立て、それぞれの丸薬を、毒を入れていないそっくりな丸薬と一緒に入れた。俺はその時心に決めていた。チャンスが来たとき、あいつらはそれぞれ、この箱の中から1つを選び出す。そして俺は残りを飲む。この毒は完全に致死的で、、ハンカチに包んで拳銃を発射するみたいに音は出ない。その日から俺はいつも丸薬の入った箱を持ち歩いていた。そしてここで、それを使う時が来たのだ」

「時刻は12時を過ぎて一時に近かった。荒れて風が強く、ひどいアメの降る寂しい夜だった。外は憂鬱だったが、俺の心は嬉しかった、-非常に嬉しかったので純粋な歓喜から叫び声を上げかねなかった。もしあんた達の誰かが、何か願いがあり、それを20年間待ち焦がれ、突然手の届くところに来たのが分かれば、俺の気持ちも理解できるだろう。俺は葉巻に火をつけ、神経を安定させようとそれをふかした。しかし手が震え、こめかみが興奮で疼いた。馬車を走らせながら、俺はジョン・フェリアー老人と愛するルーシーが暗闇の向こうからあんた達を見るようにはっきりと見えた。俺がブリクストンロードの家の前に馬車を停めるまで、ずっと2人は俺の前の馬の両側にいた」

「人影はなく、雨が滴る音以外、何の物音もなかった。俺が窓から中を覗き込んだとき、ドレバーが身体をまるぬてよって寝ているのがわかった。俺は奴の腕をゆすり『降りる時間ですよ』と言った」

「『あいよ、運ちゃん』奴は言った」

「奴は指示したホテルについたと思っていたようだ。それ以上、何も言わず降りたからだ。そして庭を俺についてきた。奴はまだちょっとフラフラしており、俺は奴をしっかりさせるため、脇を歩かなければならなかった。俺たちが戸口に来たとき、俺はそれを開いて奴を正面の部屋に入れた。誓って言う。この間ずっと、あの父と娘は俺たちの前を歩いていた」

「『やけに暗いな』奴は足を踏みならして言った」

「『すぐに明かりをつけましょう』俺はマッチを擦り、それを持ってきたロウソクに押し当てながら言った。『さあ、イーノック・ドレバー』俺は彼の方に向き直って続けた。そして明かりを自分の顔にあたるように掲げて言った『誰か分かるか?』」

「彼はよってぼんやりとした目で、一瞬俺をじっと見た。その時、その目から恐怖がはじけ出し、全身がガタガタ震えるのが見えた。俺が誰かわかったのは明らかだった。奴は真っ青になってよろよろと後ろに下がった。そして、歯をガタガタと震わせて、額から汗が噴き出ているのが見えた。その様子を見ながら、俺は扉にもたれて大声で何時までもわらってやった。ずっと復讐は甘美なはずと思っていたが、これほどまでの充足感は予想していなかった。」

「『ゲス野郎!』俺は言った。『俺は追いかけてきたぞ。ソルトレイクシティからサンクトペテルブルグまでな。しかしいつもお前は俺から逃げた。今、遂にお前の放浪は終わった。お前か俺のどちらかは、明日の日の目を見ない。』奴は俺が話している間にまだ後ずさりしていた。そして、その顔つきから、奴は俺を狂っていると考えていることがわかった。この時はそうだっただろう。こめかみの鼓動はでかいハンマーで殴られるようで、もし幸いにも、鼻血がどっと吹き出ていなければ、俺はきっと何か、発作を起こしていただろう」

「『ルーシー・フェリアーについて、今どう思っている?』俺は扉に鍵をかけ、奴の鼻先で鍵を揺らして叫んだ。『懲罰が巡ってくるのは遅かった。しかし遂にお前に追いついた』俺が話しているとき、奴の臆病な唇が震えているのが見えた。命乞いをしようとしていたかもしれない。しかし奴はそれが無意味だとよく悟っていた」

「『俺を殺害する気か?』彼は口ごもって言った」

「『何が殺害だ』俺は答えた。『狂った犬を殺害するなどと、誰が言う?俺の愛する女性に対して、お前が慈悲をかけたことがあるのか?父親を惨殺して引き離し、呪われた恥知らずなハーレムにつれてきたのは誰だ?』」

「『しかしお前だ、無垢な心をひきさいたのは』俺はあの箱を前につきだしてどなった。『偉大なる神に裁きをつけてもらおう。選んで飲め。1つには死が入っている。もう1つには生が入っている。俺はお前が残したものを飲む。さあ確認しようじゃないか。地上に正義というものがあるのか。それとも偶然が支配しているのか』」

「奴は狂ったように叫んで縮こまり慈悲を請うた。しかし俺はナイフを取り出して喉元に突きつけ、従わせた。その後、俺は残りを飲み干した。ほんの僅かの間、俺達はどちらが生き、どちらが死ぬか、判明する瞬間を待ち、黙って向き合ったまま立っていた。わすれられようか。初めて痛みの兆候が現れて、毒を飲んだのが自分だと分かったとき、奴の顔に浮かんだ表情を。それを見て俺は笑った。そしてルーシーの結婚指輪を奴の目の前に差し出した。しかしアルカロイドの効き目は素早かったので、それは一瞬だった。痛みの発作が表情を深め、奴は自分の前に両手を差し出し、よろめき、その後、ひしがれた叫びを上げ、音を立てて床に倒れた。俺は足で奴をひくり返し、心臓に手をおいた。奴は死んだのだ!」

「俺の鼻からは血が流れ続けていたが、それは気にしていなかった。俺がどうして、それを使って壁に字を書くことを思いついたのか、よくわからない。多分何か調子にのって警察を間違った方向に向けようと、考えたんだろう。俺はウキウキして上機嫌だったからな。俺はニューヨークで見つかったドイツ人のことをおぼえていた。死体の上にRACHEと書かれていて、その頃新聞では秘密結社がやったのに違いないと言われていた。俺はニューヨークの人間が惑ったものは、ロンドンの人間も惑うだろうと思ったので、自分の血を指につけ、壁の適当な場所にその文字を書いた。それから俺は自分の馬車まで歩いて行った。周りには誰もおらず、まだ非常に荒れた天気だとわかった。少し馬車を走らせたとき、いつもルーシーの指輪を入れていたポケットに手を入れて、指輪がないのに気付いた。あの指輪は、俺が持っている彼女の唯一の形見だったから、激しく動揺した。俺はドレバーの死体にかがみ込んだ時に落ちたのかもしれない、と考えながら馬車を戻した。そして馬車を横道に残し、俺は大胆にも家まで戻った、-あの指輪を失うくらいならどんなことでも喜んでやる気になっていたのだ。俺がそこについたとき、ちょうど警官が出てくるところに鉢合わせした。そしてあきれるほど酔っ払ったふりをして、やっとのことで警官に疑われずにすんだ」

「これがイーノックドレバーの最期の有様だ。次に俺がやらなければならないのはただひとつ、スタンガーソンを同じ目にあわせ、ジョン・フェリアーの借りを返す事だった。俺は奴がハリディ・プライベートホテルにいることを知っていたので、俺は一日中その前をうろついていた。しかし奴はでで来なかった。ドレバーが現れなかったことから、奴は何かおかしいと気付いたかもしれない。と俺は考えた。スタンガーソンという男はずる賢い野郎で、いつも警戒を怠らなかった。だが部屋の中にいれば、俺が近づけないと思っているなら、それは大きな間違いだ。俺はすぐに、あいつの寝室の窓がどこにあるかを突き止め、次の日の朝早く、ホテルの後ろの道にいつもおいてあったいくつかのはしごを利用し、明け方の闇にまぎれて奴の部屋に入った。おれば奴を起こし、奴がずっと前に置かした罪について、命をかけて責任をとる時がやってきたと言った。俺はドレバーの死に様を奴に説明し、同じように毒薬の選択権を与えた。奴は自分に与えられた安全の機会にすがるかわりに、ベッドから飛び起きて喉元に飛びかかってきた。自己防衛上、俺は奴の心臓をつきさした。まあどちらにしても同じことになっただろうな。神意は、決してあの罪深き手が毒以外のものをつまみ上げるのを許さなかっただろう」

「助かったことに、もうあまり言うことは残っていない。もうへとへとだ。俺はアメリカに戻るまで十分な貯金ができるまで地道にやるつもりで、一日ほど御者をしていた。操車場に立っていると、汚い子供がジェファーソン・ホープという業者がいるかを尋ね、ベーカー街221Bに来るように頼んでいる紳士がいると言った。俺は別に問題ないだろうと出かけた。そして次に知ったことは、この青年が俺に手錠をかけたことだ。こいつは、俺は生まれてから見た中でもっともうまく手錠をかけた。こいつは、俺が生まれてから見た中で最もうまく手錠をかけた。俺の話はこれで終わりだ。あんた達は俺を殺人者だと思うだろうが、俺はあんた達と同様、正義を司る役人だと思っている」

男の話が非常にスリルに富み、話しぶりが印象的だったので、我々は黙って聞き入っていた。犯罪のあらゆる詳細に飽きた、プロの警部にとっても、この男の話には非常に興味を引かれたように思えた。彼が話し終わったとき、我々はしばらくじっと座っていた。ただ、レストレードが速記録に修正を加える時の鉛筆の音だけが響いていた。

「もう少し聞きたいことがひとつだけある」シャーロックホームズはついに言った。「僕が広告に出した指輪を取りに来た、君の仲間は誰だ?」

逮捕者はふざけたようにホームズにウインクした。「自分自身の話は話せるが」彼は言った。「しかし他の人間をもめ事に巻き込みはしない。俺はあんたの広告を見た。そしてそれがおとりかもしれないが、俺が求めている指輪かもしれないと考えた。友人は自ら行って見てきてくれた。彼の手際は認めるだろうと思うがね」

「もちろんだ」ホームズは心の底からこういった。

「さあ、紳士諸君」捜査官は厳かに言った。「法の手続きは遵守されなければなりません。木曜日、逮捕者は治安判事のところに送られます。そしてあなた方の出席を要請します。それまで私が彼に対して責任を持ちます。」彼は話しながらベルを鳴らした。そしてジェファーソン・ホープは2人の看守につれていかれた。ホームズと私は駅まで行き、ベーカー街に戻る馬車を見つけた。

我々は全員、木曜日に治安判事の前に出頭するよう要請されていた。しかし木曜がきても、我我が証言する機会はなかった。この事件は、より高い裁判の手にゆだねられた。そしてジェファーソン・ホープは、厳格な裁判が彼に言い渡される裁判所に召喚させられた。彼は逮捕された次の日、大動脈瘤が破裂して独房の床に横たわっているところを発見された。あたかも死ぬ瞬間、仕事をうまく成し遂げて人生に悔いはないと回想したかのように、穏やかな笑みが顔に浮かんでいた。

「グレッグソンとレストレードはこの死で激怒するだろうな」次の夜、この件について話しているとき、ホームズが言った。「2人にとって、素晴らしい宣伝材料だったのにな」

「あの2人は、犯人逮捕に大きな役割を果たしたとは思えないが」私は答えた。

「実際に何をしたかはまったく重要ではない」ホームズは苦々しげに答えた。「問題は、大衆にそれを信じさせることじゃないか?まあ、いい」彼は少し間をおいて、もっと晴れやかに続けた。「ともかくこの捜査をしないわけにはいかなかった。僕の記憶によれば、これより良い事件は見当たらない。単純ではあったが、いくつか啓発的な点があった。」

「単純!」私は叫んだ。

「そう、実際、それ以外に表現のしようがない」シャーロックホームズは私の驚いた顔に笑いかけて言った。「本質的に単純だったことの証拠に、僕は、少々ありふれた推理をした以外、何の手助けもなく、三日で犯人を逮捕できたじゃないか」

「たしかにそのとおりだ」私は言った。

「僕は既に、普通でないものは、ほとんどの場合、障害物というよりも手がかりだと君に説明しただろう。この手の事件を解決するのに、重要なのは逆方向に推理できる能力だ。これは身につけると極めて有効だし、しかも非常に簡単に習得できる。しかしたいていの人間は、あまりこれを練習しない。日常生活の出来事では、前向きの推理の方が利用価値が高い。だからもうひとつがなおざりにされることがある。合理的に推理できる人間50人に対して、分析的に推理できるのは1人だ。」

「正直に言って」私は言った。「何のことかさっぱりわからない」

「まあ、おそらく無理だろうな。もっとわかりやすく説明できるかな。もし連続した出来事を聞けば、たいていのにんげんはその結果どうなるか分かるだろう。それらの出来事を心の中でつなぎ合わせて、それから次にこういうことが起きると論ずる。しかし、まず結果を与えられて、どんなステップを踏んでその結果にたどりついたかを、自分で考えて導き出すことができる人間はほとんどいない。僕が逆向きの推理とか分析的と言ったのは、こういう能力を意味しているのだ」

「なるほど」私は言った。

「今回の事件は、結果が与えられて、それ以外の全てを自分で見つけなければならないという事件だった。出来る限り、僕の推理を一つ一つ君にシメしてみよう。一番最初から始めよう。君も見たと思うが、僕は徒歩で家に近寄った。心構えは、あらゆる思い込みをはいして、完全に自由な気持ちになることだった。僕は当然,まず車道を調べることから始めた。既に説明したように、僕はそこにはっきりと辻馬車の跡があるのを発見した。後の調査で判明したのだが、その馬車は間違いなく夜の間に来ていた。僕は車輪の幅が狭いことから、やってきたのが自家用馬車ではなく、辻馬車だと確信した。ロンドンのグローラーは普通、民間のブロアムよりもかなり幅が狭い」

「これが僕が最初に獲得した得点だ。それから僕はゆっくりと庭の小道を歩いて行った。小道はたまたま足跡がとくに残りやすい粘土質の土壌でできていた。君には間違いなくあの道が、ただの踏みつけられたぬかるみの線に見えたはずだ。しかし訓練した僕の目には、その表面の跡は一つ一つが全部意味を持っていた。足跡を追跡する技術以上に、この上なく重要で、この上なく無視されている探偵化学の分野はない。」

晒し練習2 文字カウント数(文字数(スペースを含めない))

1日目 64文字
2日目 57文字
3日目 55文字
4日目 75文字
5日目 84文字
6日目 77文字
7日目 81文字
8日目 103文字
9日目 100文字
10日目 119文字
11日目 129文字
12日目 135文字
13日目 188文字
14日目 237文字
15日目 259文字
16日目 292文字
17日目 275文字
18日目 275文字
19日目 276文字
20日目 323文字
21日目 304文字
22日目 378文字
23日目 392文字
24日目 344文字
25日目 404文字
26日目 371文字
27日目 385文字
28日目 449文字
29日目 401文字
30日目 417文字
31日目 474文字
32日目 518文字
33日目 504文字
34日目 490文字
35日目 503文字
36日目 549文字
37日目 543文字
38日目 533文字
39日目 531文字
40日目 575文字
41日目 671文字
42日目 675文字
43日目 766文字
44日目 653文字
45日目 726文字
46日目 797文字
47日目 735文字
48日目 788文字
49日目 839文字
50日目 748文字
51日目 843文字
52日目 861文字
53日目 863文字
54日目 803文字
55日目 827文字
56日目 853文字
57日目 907文字
58日目 900文字
59日目 720文字
60日目 950文字
61日目 952文字
62日目 929文字
63日目 1003文字
64日目 1014文字
65日目 897文字
66日目 929文字
67日目 975文字
68日目 976文字
69日目 975文字
70日目 983文字
71日目 1052文字
72日目 876文字
73日目 1013文字
74日目 1064文字
75日目 1062文字
76日目 1135文字
77日目 1050文字
78日目 1005文字
79日目 1042文字
80日目 1008文字
81日目 1135文字
82日目 1072文字
83日目 1048文字
84日目 943文字
85日目 960文字
86日目 1106文字
87日目 1044文字
88日目 904文字
89日目 1001文字
90日目 1049文字
91日目 993文字
92日目 953文字
93日目 931文字
94日目 922文字
95日目 1006文字
96日目 1044文字
97日目 1164文字
98日目 1086文字
99日目 1095文字
100日目 1171文字
101日目 1020文字
102日目 1050文字
103日目 1096文字
104日目 1095文字
105日目 1144文字
106日目 1011文字
107日目 1052文字
108日目 1007文字
109日目 1079文字
110日目 1223文字
111日目 1136文字
112日目 1215文字
113日目 1076文字
114日目 1170文字
115日目 1158文字
116日目 1188文字
117日目 1265文字
118日目 1267文字
119日目 1221文字
120日目 1115文字
121日目 1222文字
122日目 1265文字
123日目 1271文字←イマココ

 

▼親指シフト習慣化チャレンジ 124/30日目 感想

今日は昨日より「1265文字」→「1271文字」と6文字UP。(分速84.7文字)

小さいけど自己ベスト更新。そして7日間中、6日間が1200台と、なかなか1200台にいかなかったことを考えれば高め安定。もうちょいで1300行くと思う。本当は1500が目標だったが、ここからの成長はちょっとずつだと思うので次のチャレンジは何にするかそろそろ考える必要あり。

 

▼わからなかったこと(課題)

・分速100文字まで三ヶ月以内(八月)でいきたい

・漢字変換でミスった時が悲しい

・疲れてきた夕方あたりからタイピングミスが増えてくる

・かっこ を がっこ とタイピングしてしまうことが多い

 

(3分)

 

再掲)練習メニュー

・毎日15分 タイピングの練習
・毎日15分 著作権切れの書籍(昔の本)の文章を少しずつ書いていく。
・毎日ブログ更新 日ごとに色を変えて、どれだけ進んだか確認しながら進めていく。
・タスク管理ソフト taskchuteに上記タスクを毎日ルーチンで追加
・iPhoneアプリ Dueに上記タスクを登録
・週次 スピードを効果測定、どれだけ速くなったか測定する
・習慣化アプリ Streaksに「親指シフト」追加。毎日練習ができたらチェックをつけていく

 

親指シフトの師匠

[箱] 親指シフトまとめ | [箱]ものくろぼっくす
親指シフトの師匠 ソフト設定から練習メニューの相談、間違えやすいポイント、つきやすい変なクセなどを教えてもらいました!

参考書籍)習慣化のための参考書籍

親指シフトは身体習慣なので30日で身につける!

 

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